お母様はルドルフ推しのようです。
「ルドルフ、知っていましたか?」
「僕も知らなかったよ」
興奮が冷めやまない私たちはバーキン家内にあった私の部屋に戻ると急いでジュディとアンドリューに手伝われながらドレスを着替えた。
今度は動きやすいワンピースだった。
「お疲れ様、アリア!」
部屋にお母様が入ってきて私を抱きしめる。
「殿下もありがとうございました。どうしてもアリアの結婚式が見たくて準備してしまいましたのよ」
学園に入る前には国民に向けたものが正式に行われるのにと思いながらも嬉しかった。
やっぱり大好きな人たちに祝われるのってこんなにうれしいものなんだ。
「バーキン家の皆様に祝っていただけて嬉しいです。ありがとうございます、バーキン侯爵夫人、いや、お義母様」
ルドルフがタイをしめながら言うとお母様が真っ赤な顔で私の手を両手でつかみ、左右にゆすった。
「アリア!!殿下が私を『お義母様』って言ったわよ!!」
お母様、興奮する気持ちはわかるけれど、ゆすられすぎて私の脳が大変なことになっているからね?!
ジュディが「奥様!!」と声をかけるとお母様は正気を取り戻したのかゆっくりと深呼吸をして淑女の微笑みをルドルフに向けた。
「申し訳ございません、取り乱しましたわ」
一瞬で外向きの笑顔に戻ったお母様だけれど、若干ルドルフが引いているのがわかる。
推しの前になるとこうなってしまうのは致し方がないのだ。
許してあげて欲しい。
「奥様、準備が整いましたので、そろそろ」
ジュディの言葉にはっとしたお母様が手をたたいた。
「さて、食事にしますか!」
私とルドルフがパーティーの行われている部屋に入ると再び拍手に包まれた。
お義父様とお義母様は公務があってすでにかえってしまったそうで残念だったけれど、殺人的なスケジュールの合間に顔を出してくれたことがうれしかった。
パタパタと可愛い音が近づいてくる。
何だろうと音のする方に顔を向けるとフェリシティちゃんだった。
駆け寄ってきたかと思えば興奮したように私の手を取る。
「お姉様、本当に本当に素敵でした!!」
ルークがフェリシティちゃんの後を追うようにこちらに来ると息を切らしながらもルドルフに微笑む。
というか、フェリシティちゃん、そんな重いドレスを着ているのになんでそんなに身軽なの?それともルークが体力ないだけ??
「殿下、とても素敵な式でした」
「ありがとう、二人は相変わらず仲が良いみたいだね」
ルドルフの問いかけに真っ赤になるルーク。
相変わらず初々しいルークである。
「殿下とアリア嬢も相変わらず仲がよろしいようですね」
フェリパパが現れたと思ったら大きな箱を両手に抱えていた。
「アリア嬢の誕生日プレゼントにルークが作ったんですよ」
フェリパパが自信満々に言って箱をテーブルの上に置くと開けてくれと言わんばかりに私に微笑みかけた。
使用人を使わず、自分で持ってくるとはどれだけ自慢したいのだろうか。
フェリパパのルーク好きは健在だ。
「ありがとうございます。ルーク様。開けてもよろしいでしょうか?」
「勿論です!!」
リボンを解いて箱を開けると・・・私は固まってしまった。