粛清の仕上げ・・・
粛清はまだ終わらない・・・
3人は濱本組本家に着いた。
「「お前が行って来い・・・」」
「承知した・・・」
陸斗は濱本組本家に入って行く。
本屋に入って行く様に、急がず騒がす、ゆっくりと入っていく。
陸斗が入って行くと、近くのヤクザ達はどんどん倒れていく。陸斗の忍力により、一瞬にして脳震盪を起こさせ、意識を失わせた。
「誰だ?」
関東最大暴力団勢力、濱本組3代目組長、[濱本徹]は布団から体を起こす。
闇から声が聞こえる。
「声を出したら殺す、動いたら殺す、俺の質問に偽りがあったら殺す、分かったら目を閉じ、頷け・・・」
濱本は目を閉じ、頷いた。
「ヤクザはヤクザらしく、堅気に迷惑を掛けない・・・俺達との約束、破ったな・・・」
「そんな事はない!」
「ならば、この説明をして頂こう・・・」
陸斗の目が怪しく光る。
濱本の脳裏に、先程の住職とヤクザ達とのやり取りが浮かぶ。
「さあ、答えるんだ・・・住職の前に座る男、知っているな?」
「はい・・・黒鷲組若頭の星山という男です・・・」
「黒鷲組、お前の傘下だな・・・」
「はい・・・傘下です・・・」
「ならば、濱本組は今日で終わる・・・いいな!」
「ま、待って下さい・・・黒鷲組は我々が・・・」
「我々が何だ・・・いまさら俺達の信頼が回復するとは思えんが・・・」
「我々がすぐに制裁を・・・」
「俺達ならすぐに出来る・・・朝までには、濱本組諸共跡形も無くなる・・・俺達のが確実だ・・・」
「待って下さい、私は知らなかったんだ・・・せめて情けを・・・」
「子の不始末は親であるお前の不始末・・・そう言っていた筈であったが?」
「そ、それは承知しているが・・・今少し待ってくれないか?」
「俺は気が長い方ではない・・・待つ事は出来ない・・・」
「頼む・・・もう一度チャンスを・・・」
「ならば、黒鷲組は俺が潰す・・・その後始末はお前がするんだ・・・出来なければ濱本組が無くなるだけだ・・・もっとも、お前は死なない・・・俺の幻楼の術で永遠とも取れる地獄を繰り返すだけだ・・・」
「必ず後始末はする・・・」
「そうか・・・もう一つある・・・お前の傘下の組に迷惑を掛けられたんだ・・・映像の回収、遺族への誠意・・・1週間だ・・・この二つ・・・俺達が納得出来る物で無かったら・・・分かっているな・・・楽しみにしているぞ・・・濱本組の誠意・・・俺は濱本組を潰す事・・・何とも思っていない・・・この意味、しっかり理解しておく事だ・・・」
声と共に気配が消える。
濱本は大きく一呼吸し、大声を出す。
「すぐに清水を呼べー!」
気絶していた者が意識を取り戻すには充分な声であった。
すぐに斎戒若頭が動き、濱本組全体が動きだした。
3人は黒鷲組の前にいる。
なかなか立派な建物である。
3人は当たり前の様に歩を進める。
「お前等、なんの用だ?」
入り口の男が海斗の肩に触れた瞬間、その男は全身が凍り、海斗が軽く触れると粉々になった。
その姿を見て、もう1人の男は動きが止まるがすぐに空斗が手をかざす。
男は一瞬にして消えていった。
3人はそのまま中に入って行く。
ヤクザ達が次々に来るが、空斗が相手だとすぐに消え去る。海斗が相手だと凍らされて粉々。陸斗が相手だと溶けて消えていく。
誰もが近付けないでいた。
「ここは俺が引き受けよう・・・」
海斗は残り、2人は歩を進める。
「お前達は死ぬんだ・・・」
海斗は右手の人差し指と中指を立て、鼻先に当てた。
またも透明な箱の様な物が現れ、中の空気が黒く淀んでいく。
海斗は1人、その箱の中から通り抜ける。
空間が切り開かれ、中からジョネスがさっきの男の左手を持って現れる。
「またも俺か・・・嬉しいねぇ・・・こんなに相手が居て・・・」
ジョネスが薄気味悪い笑いを浮かべた。
「俺は2人の事を見てくる・・・」
「海の首領・・・任せておけ・・・」
海斗が歩を進めると、後ろから物凄い叫び声が聞こえてくる。
しかし、海斗は構わず歩を進めた。
騒ぎを聞きつけた数名が空斗・陸斗の前に立ち塞がる。
「なんの用だ!」
「ここは空の首領である俺の出番だ・・・」
空斗は先程の海斗と同じ格好をする。
次の瞬間、1人の男の右腕が消える。
「うわああああああ!」
血が吹き出す。
それを境に、男達は次々と体の一部が消えていく。
陸斗は歩を進める。
陸斗の後ろでは、叫び声が聞こえてくる。
陸斗は組長の寝室に入っていく。
「この騒ぎはお前か?」
「だと何か?」
「濱本組傘下、黒鷲組と知ってやっているのか?」
「濱本か・・・その名前を口にして欲しくない・・・濱本ならそう言うな・・・」
「何を言っている!」
「まあ、お前は破門らしい・・・俺は濱本組を潰すのも構わないと言ったんだがな・・・濱本組も今頃大変だろうな・・・」
「どういう事だ!」
「お前には関係ない・・・星山の件、責任とって貰うぞ・・・」
「星山?あの寺の事か?あれが何だ!」
「なるほど・・・濱本にはもう一つ忠告が必要そうだ・・・」
「何だと!」
「さて、話は終わりだ・・・」
陸斗の話が終わると、空斗・海斗が入って来る。
「選んでいいぞ・・・」
「跡形も無く消え去るか・・・」
「地獄を見て死ぬか・・・」
「永遠の地獄か・・・」
「俺達の逆鱗に触れたんだ・・・」
「諦める事だ・・・」
「俺達3首領の決定は絶対だ・・・」
「ま、待ってくれ・・・3首領・・・まさか・・・」
「お前達の様な若僧が、かな?」
「・・・お前達の様な若僧が・・・はっ!」
「さて、選ばない様だ・・・ならば勝手にやらせて貰う・・・」
陸斗は右手人差し指を立て、自分の鼻先に当てる。
床から手が出て来る。
その手が黒鷲組組長の足を掴む。
足を掴んだ物が出て来た。
「陸の首領、俺様を召喚か?」
「誰だ貴様は?」
「俺はサタナキア・・・悪魔サタナキアだ・・・どうやらお前は人間失格なようだ・・・」
「サタナキア・・・地獄の苦しみと後悔、それが望みだ・・・」
「はっはっは、お前は大分陸の首領に嫌われたな・・・これからが楽しみだ・・・」
サタナキアは組長を引きずり、床の中へ消えていった。
「粛清は終わった・・・」
「そうだな・・・」
「後は依頼者にもう一度会うだけだが・・・海の・・・ジョネスがまだ暴れてる・・・」
「しまった、忘れてた!」
海斗は下の階に走って行く。
空斗は家に帰って行った。
陸斗は依頼者の所に移動する。
海斗はジョネスを戻した後、右手の人差し指・中指・薬指を立て鼻先に当て目を閉じた。
海斗が目を開くと、龍の頭が浮き出て見える。
もっとも見えるのは、3兄弟だけである。
海斗は龍の頭を貫く。
地割れが起こり、一瞬にして建物が崩れ去った。
依頼者は部屋におり、1人で座っている。
「声を出すと殺す、動いても殺す、質問に対し偽りがあっても殺す、分かったら目を閉じて頷け・・・」
男は目を閉じ、頷いた。
「依頼は片付いた・・・報酬を貰う・・・」
「貯金は明日、全額下ろす・・・どう渡せば・・・」
「依頼の時の様に・・・」
「はい・・・声に従います・・・」
「もう一つあったな・・・」
「はい、保険金を!」
「お前の命、確かに預かる・・・お前は生きるのだ・・・自殺した彼女の分まで必死で生きる・・・それがお前に課せられた地獄・・・人の道を踏み外さず、しっかりと歩いて行く・・・これは命令だ・・・破れば永遠の地獄が待つ・・・心するがよい・・・」
声と共に気配が消えた。
翌日、黒鷲組は跡形も無く消えたが、表には出なかった。黒鷲組がやっていた違法行為に対し、濱本組が全てを回収した。
更に、被害者の関係者に1億円ずつ送られた。
結果として、今回の依頼者は1億円を受け取る形になった。
闇の粛清は確実に行われる。
闇中3兄弟がいる限り、粛清は必ず行われる。
しかし、3兄弟は決して正義ではない。
人の血を流し、命を奪う行為が正義である筈が無い。
それは3人が1番良く分かっている。
しかし、それでも粛清は行われる。
必要悪、3人は誰よりも理解し、粛清を忠実に行っていく。
恐ろしい輩が世の中を見ている・・・
そして明日も・・・