粛清・・・地獄を見せる・・・
さあ、粛清の時・・・
3兄弟は大きなお寺に着いた。
3人はお寺の本堂に入って行く。
本堂では、仏様の木彫りの人形の前で、住職とヤクザの幹部と見られる男がお金のやり取りをしている。
周りに手下のヤクザが10名程囲んでいる。
更に20代の女性が4人、その中にいる。
4人の女性は震えている。
「そんなに震えんでも大丈夫じゃ!可愛がってあげるからの!」
「その後も大丈夫、俺達がいるからね!」
4人の女性の震えは、より一層大きくなった。
その時である。
「はい、お邪魔するよ!」
本堂に陸斗が入って来た。
学校から帰って家に入る様に、当たり前の様に入って来た。
「何だ!」
「ちょっと野暮用がありましてね・・・住職、地獄を見て貰います・・・」
「はっはっは、何を寝言を・・・寝言は寝てから言いなさい!」
「寝言ねぇ・・・俺が来たのに分からない・・・あんたの方がよっぽど寝言だ・・・」
「にいちゃん、なんか知らんが邪魔だ。痛い目みたくなかったら、出ていきな!」
周りのヤクザの1人が陸斗の胸ぐらに掴みかかる。
陸斗がそのヤクザの掴んだ右腕を触る。
「ぐあああああ!」
ヤクザの右腕は、陸斗が触った場所から溶けていき、床に落ちた。
「馬鹿だねぇ、俺に不用意に近付くなんて・・・」
ヤクザ達が身構える。
「4人は確保した・・・」
声のした方をヤクザ達が注目する。
言葉を発したのは海斗であった。
「記憶操作は終了している・・・」
陸斗でも海斗でもない方向から声を発したのは空斗。
ヤクザ達を中心に3兄弟が囲んでいる。
「さてどうするか・・・選んでいいぞ・・・」
「潔く殺されるか・・・」
「醜く抵抗して殺されるか・・・」
「どちらにしても、お前達は死ぬんだ・・・組も無くなる・・・」
「住職は特別だ・・・」
「地獄を見る・・・」
「舐めるなよ、お前等殺せ!」
ヤクザの幹部の一言で手下達が一斉に3人に襲い掛かる。
陸斗は触れる者が触れた所から溶け出す。
海斗は触れる者が触れた所から凍り付く。
空斗は触れる者が触れた所から無くなる。
3人は特に何かをしていない。
ただ触れるだけ、触れるだけで次々とあり得ない事が起きる。
ヤクザの手下達は、体の一部が無くなっている。
一瞬、空斗が自分の顔の前に自身の右手を持って行き、人差し指と中指を立て、自分の鼻先に当てた。
次の瞬間、ヤクザの手下達は断末魔を上げる暇さえなく消え去った。
海斗はヤクザの幹部の男に近付く。
「く、来るな・・・撃つぞ!」
幹部は拳銃を海斗に向け、引き金を引く。
弾丸は海斗に直撃したが、海斗は平気である。
忍力を全身に使っている為、全身が鋼鉄の様に硬く、拳銃くらいでは全く通じない。
「お前には聞きたい事がある・・・答えて貰うぞ・・・」
「い、命だけは・・・」
「自ら殺して欲しいと言ってくるさ・・・さぁ答えろ、お前は何処の組だ・・・」
「は、濱本組傘下・・・黒鷲組・・・」
「ほう、濱本組か・・・関東最大と言われる・・・跡形も無く、今夜消し去るか・・・」
海斗は空斗と同じ様な格好をする。
幹部の周りに透明な箱の様な物が出来、その中の空気がこちらと違い、かなりどす黒くなっている。
その空間を切り裂く様に、この世の者とは思えない姿の者が現れた。
「海の首領よ、私を呼ぶとは・・・この者、そういう事なのだな・・・」
「お前は誰だ・・・に、人間なのか?」
「人間か・・・面白い事を聞く・・・我が名はジョネス・・・まあ、人間の頃の名だがな・・・」
「ジョネス・・・まさか、解体屋ジョネスか・・・50年前の最悪の殺人鬼・・・150人を素手で解体した、あのジョネスか?」
「ははは・・・知っているとは・・・光栄だね・・・ならば、これから起こる事は分かっているな・・・楽しみだ・・・」
「うわぁあああああ!」
幹部は拳銃を打つが全く効いていない。
ジョネスと言ったその者は薄ら笑いを浮かべている。
不意にジョネスが幹部の右手首を掴んだと思ったら、幹部の右手が落ちる。
ジョネスは自身の手に幹部の手首を持っていた。
「ぬあああああああああ!」
「まだまだだよ・・・この空間は、死ぬ事が許されない・・・痛みがずっと続く・・・さあ、次は何処を解体されたいんだ?」
ジョネスは左肩を握る。
「ぎゃあああああああ!」
ジョネスは右ももを握る。
「ぐぁあああああああ!」
ジョネスは笑っている。
「お、俺が悪かった・・・楽にさせてくれー!」
「だらしない奴だ・・・」
海斗がさっきと同じ格好を取ると空間は消えていく。
「足りない・・・」
ジョネスは言い放ち、幹部を掴み、空間の狭間に消えていった。
その様子を見ていた住職、油汗を流している。
「逃がすと思うか・・・影は縛っている・・・」
「か、金ならいくらでも出す・・・た、助けてくれ!」
「そうやって言って来た者を何人、その手で殺めて来た・・・」
「た、頼む・・・悪かった、心から反省する・・・助けてくれ!」
「・・・いいだろう・・・俺の術に耐えたら助けてやる・・・」
「おお、ありがとう!」
陸斗は空斗、海斗と同じ格好をする。
住職の周りには誰も居なくなったが、住職は動けない。目を閉じる事は出来ない。
目の前の空間が切り開かれ、無残な姿になったヤクザの幹部、ヤクザの手下、怨みを抱いて自殺していった者達が出て来る。
その者が次々に住職の体を引きちぎる。
住職に物凄い痛みが走る。
「うわあああああああ!」
気が付くと陸斗が目の前にいる。
「た、耐えたぞ・・・さぁ、解放しろ!」
「何を言っているんだ、これからだ・・・ほら、地獄が寂しいとさ・・・」
陸斗が話し終わると、陸斗達の姿が消える。
住職に先程と同じ光景が映る。
同じ事が起こる。
「うわあああああああ!」
「どうしたんだ・・・」
「今度こそ・・・」
「今度こそ何だ・・・」
陸斗達の姿が消え・・・・・・
「この世から消し去る依頼なら、空の首領である俺が殺る・・・」
「地獄を見せるなら、海の首領である俺の出番だ・・・しかし、今回の依頼は地獄・・・」
「陸の首領・・・弟ながら恐ろしい・・・」
「あいつは1番、粛清に忠実だ・・・」
住職は何度も恐ろしい幻を繰り返す。
それも短時間でである。
住職には永遠とも取れる時間をこの苦痛で過ごすのだ。
まさに地獄・・・・・
3人は仏様の木彫りの人形の前に行く。
「ふん・・・崇められたって、何も助けやしない・・・」
「何がありがたいんだか・・・」
「全くだ・・・」
3人は木彫りの仏様を、空斗が真っ二つにし、海斗が粉々にし、陸斗が跡形も無く燃やした。
外に出た3人は、鐘つきを盛大に壊した。
その音に誰もが気付き、パトカーまでが出動する騒ぎになったが、3人はすでに何処にも居ない。
しかし、その粛清の帰り、
「陸の・・・どうする?」
「陸の・・・お前の粛清だ・・・」
「濱本組か・・・久しぶりに濱本に会うか・・・」
3人は濱本組本家に移動を開始した。
まだまだ粛清は終わらない・・・