第8章
話にならん。俺は和木坂が話せるようになるまで待つことにした。とりあえず石の上に座らせ、自分も少し空けて座った。和木坂は病気かと思うくらい頻繁に瞬きをしていた。
俺の見ため、やっぱ怖いのか?金髪がよくないんだろうか。身長はもう小さくできないし、修正できる要素は髪くらいしかない。
もう数分は経ったと思うが、和木坂は相変わらず世界の終わり状態だし、俺は気の遣い方もわからない。仕方ないのでぼろギターを拾い上げ、軽く鳴らしてみた。やはり四弦五弦のチューニングがおかしかった。俺なりに調整してから、ピックすら持っていなかったので一円玉を財布から出し、それで青空を弾いてみた。
アコースティックが久し振りだったせいか、まあまあ良い音が出てる気がして、調子に乗った俺はちょっと歌ってみた。
すると、和木坂は瞬きを止め、興味津々といった表情で俺の手をじっと見つめてくる。ほとんどコードを鳴らしてるだけなのに、こいつには神業のように見えているらしい。
「和木坂、おまえ、ギター弾くのか?」
和木坂は再び瞬きを開始したが、今度は首をぐわんぐわん縦に振って返事した。気持ち悪い。
「これ弦切れてるし、チューニングもずれてたし、第一ピックなしじゃうまく弾けんだろ」和木坂はぐわんぐわん。
「音楽、好きか?」ぐわんぐわんしかけて、数秒停止の後、ぐわんぐわん。
「おまえ、歌の才能あるぞ」今度は真っ赤になって首を横にぶんぶんぶんぶん。
「口で喋れよ」
「あ、あ、あ、すいません」
また会話がループして戻ってきた。
「……じゃあ、いいから今歌ってみろ」ぶんぶんぶんぶん。
「さっきは張り切って歌ってただろ」高速で瞬きしながら全力で頭を掻きむしる。
どうしたもんか。それ以前に、こいつは本当に日本語を話せるのか?まあ一応、高校二年だしな。
しかし、俺はさっきの歌声が聴きたい。もっと他の歌も。