表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
9/10

最初の鎮魂祭、そして、

 アンロック編の、最終話です。

 【生物博物館】での事件の後、俺はセータの部屋での【セーブデータ】を【ロード】した。


 まずは、彼女達が無事にリビングアーマーを避けられるかどうかを確かめるために。


 そして、ウォルドが致命傷を負うタイミングを知るために。


 ――彼女達は、なんとか無事に、書物の隠し部屋に行けていた。この先は、セータが居るから大丈夫だろう。


 隠し部屋の入り口から離れ、ウォルドを捜した。しばらく、ゾンビ達を倒しながら、博物館の中を走る。


 ――ウォルドを見つけた。だけど、既に致命傷を受けていた。鎧から、血が溢れている。


「……くそ、新手か……」


 彼は俺を見るなり、敵と認識したようだった。この姿じゃあ、無理もないか。


「おい、しっかりしてくれ!」


 彼の振る剣は、力がはいっていない。俺は、彼に肩を貸そうとした。


「敵、じゃないのか……?」


「あぁ、そうだよ」


 ウォルドは、驚いているようだったけど、何かを理解したように、


「すまないが……行くところがある。きっと、そこに居るはず……」


 彼は無理やり、進もうとする。向かう場所は、俺は知っている。


「わかった、行こう」


 連れていく最中、彼は語った。


「あいつに……伝えなきゃいけないことがある……」


「……喋らない方が良い」


 それでも、彼は続けた。


「……ラスディアは……少し、考えが固い事がある……」


「……それは、生きて会ってから話してくれ」


 死期を感じているのか、彼は語り続ける。


「……きっと、自分の責任だと……自分の事を責めてしまうと思う……。だから、君のせいではないと……」


「……」


 いつの間にか、俺は黙って聞いていた。


「それから……謝らないと……。こんな男の告白を……受けてくれた」


 それ以上、彼は喋べる事はなかった。どうやら気を失ったようだった。


 彼を抱えて、俺は隠し部屋の入り口まで戻った。丁度、彼女達が出てくる所だった。


「ウォルド!」


 ウォルドの姿を見たラスディアが、叫ぶ。そして、俺に剣を向ける。


「貴様!ウォルドに、何をした!」


「……違うよ、ここまで……連れて来てくれた」


 怒る彼女に対して、ウォルドが答えた。俺は彼を下ろし、セータに診てもらった。


 ――これで、助かれば良いんだけど。


 しかし、ウォルドは死んでしまった。俺は、再びラスディアの泣き叫ぶ姿を見ることになった。


 ――このタイミングじゃ、駄目だ。


 俺は、再び部屋の中へ【ロード】をして、今度はウォルドを捜した。


 ――しかし、どんなに最短距離を走っても、間に合わなかった。


 今度は、魔法学都に着いたときの【セーブデータ】を試す。彼が、博物館に入る時なら間に合うはず。


 ――が、彼の生きている姿は見えた。しかし、事件の発生したときの避難する人々に押されて、わからなくなった。


 次に見つけた時には、既に遅かった。


 それからも何度も、試した。だけど、どうしても一足、遅くなってしまう。


 ――ならば、信頼を得て側から離れないようにしよう。そういえば、銭湯でのぼせたと言っていた。


 そのタイミングなら、救えるかも知れない。


 そう考えて、村での【セーブデータ】を【ロード】する。今度は、隠れながら付いていった。


 そう、イニスの提案道理に付いていく。そして、ウォルドとラスディアの二人が、銭湯へ向かったところまで来れた。


 ――しかし、ここで俺は大きな失敗をしてしまった。


 それは、この時に村での【セーブデータ】を上書きしてしまった事。


 俺は、銭湯に入ってもライダースーツが脱げない。つまり、彼がのぼせて、博物館に遅れることが防げなかった。


 騒ぎを起こしても、先に博物館に向かっても、最後には同じ結果になってしまう。


 ならばと、先に盗賊を止めてしまおうと考えた。でも、この時すでに盗賊は、隠し部屋の中。


 今から、行っても間に合わなかった。


 【そよかぜ】なら、村から先回りできるはずだったが、もう戻れない。


 ――【セーブデータ】を上書きしてしまったから。


 それから何度も、何度も何度も試したけれども、彼が死ぬ運命から救う事はできなかった。


 ――俺は、もう諦めてしまった。もう、見たくなかった。


 

 

 ――それから、半年の月日が経っていた。


 俺は、セータとラスディアの信頼を得て、魔法学都の冒険者ギルドに入ることになった。


 騎士団に入ることも、推薦されたが、この姿を理由にと断った。


 何より、彼女の側に居るのが辛かった。この世界から、逃げたしたいとも思った。


 ラスディアは、暫く落ち込んだままだったけど、それでも騎士団に復帰した。


 だけど、ウォルドの事が忘れられないようで、少し影があった。


 それから、俺の体についてもセータのお陰で、大体の事がわかった。


 ――殆ど、彼女の実験台にされていたような気がするけど。とにかく、食べ物を液状にして、発破して動くエンジンの様なものだった。


 そして、クエストを終わらせて冒険者ギルドに戻ったときだった。


「また、会えましたね?」


 イニスが、冒険者ギルドで働いていた。俺がクエストに行っている間に、やって来たそうだった。


 何があったのか訪ねると、少し前に彼女の住む村が、盗賊達に襲われたのだった。


 イニスを含めた村の数人は、襲われる前に逃げることができたのだけど、村は焼かれて彼女の両親は亡くなってしまった。


 それから、住む場所を転々として、騎士団の協力もあり、ここにたどり着いたのだった。


 俺はイニスの村を救おうと思ったけれど、その時に戻れる【セーブデータ】は無かった。


「……その、ごめん。辛いことを聞いてしまった」


「いえ、もう過ぎてしまった事ですから……」


 イニスは、明るく振る舞っていたけど、無理をしているのが見てとれた。


 ――折角の【チート能力】なのに、大事な所で失敗する。


 俺は、悪態を付いていた。これでは【チート】なんかじゃない。


 しかし、それでも俺は、それに頼っていた。そして、何時しか俺に噂がたつようになった。


 冒険者の間で、俺が受注したクエストは、必ず成功すると――。


 それもそのはず、俺は、【セーブ】と【ロード】を繰り返して、クリアしていたのだから。


 それでも無理だったクエストは、手を出すのは諦めていた。


 どんなことになっても、真っ暗な世界に戻される。失敗した事実を、突きつけられる。


 正直な事を言うと、もう嫌だった。


 それと、俺のライダースーツを不思議に思った冒険者に、俺の体について説明したのが切っ掛けで、 


 ライダースーツは、【きよめのよろい】と呼ばれるようになった。鎧のような、強度はないのだけれど。


 

 ――そして、半年が過ぎた頃。


 俺はクエストを終わらせて、魔法学都に帰っていた。バイクの【そよかぜ】に股がって。


 他の冒険者達が、【そよかぜ】を見て、いつも驚く。


 ――自慢のバイクだ。俺は、それが嬉しかった。


 魔道具の技師の人たちも、どうにか、同じ物を作ろうとして奮闘しているようだった。


 その中で、魔道具の事を教えてもらった。


 戻る途中で、休憩を取った。その際に、自分の【ステータス】を確認して見る。


 レベルは八十、能力は全て五百ぐらい。


 装備が、武器が【しんめいのつるぎ】、防具が【きよめのよろい】と【そよかぜのころも】になっていた。


 そして、必殺技の一つに【ライキック】がある。皆が、それで覚えてしまっているので、もう説明するのも諦めた技だった。


 一通り確認してから、魔法学都の入り口に着いた。何やら、騒がしい。


「何か、あったんですか?」


 入り口の門番の【ジャック】に話しかける。今日も彼の日焼けしたスキンヘッドが、眩しい。


「おや、ご存じないですか?今日は、【鎮魂祭】があるんですよ」


「鎮魂祭……?」


 ジャックから詳しく話を聞くと、どうやら日本でいう、お盆のような日だということがわかった。


 それで、人々が集まり準備を進めているのだった。それだけ聞くと、俺はジャックと別れてギルドに戻った。


「あ、アンロック、お帰り。」


 ギルドの中に入ると、イニスが出迎えてくれた。彼女は机の前に座り、折り紙を折っていた。


「ただいま……それは?」


 俺が訪ねると、それは鎮魂祭で使う、亡くなった人の魂を乗せる舟なのだそうだった。


 彼女は、自分の両親の分と村の人たちの分と、舟を折っていた。


「アンロックは、送る人は居るの?」


 ――そういえば、自分のそういった話をしたことは無かった。思い出せば、沢山居る。


 しかし、それは救えなかったことでもあった。きっと、他の冒険者達は知らないだろうな。


「……沢山、いるよ」


 その言葉で、しんみりとしてしまった。それで俺は、彼女から紙をもらい、舟を折り始めた。


「だから今日は、送ってやらないと」


 そして、沢山の舟を折った。そう、諦めて選ばなくなったクエストに行ってしまって、死んでしまった冒険者達に。


 ――そして、俺とイニスは魔法学都の広場に向かった。


 広場の高台の上に、セータが見えた。彼女の側には、ラスディアの姿も見える。


『皆さん、よく集まってくれました。今日は、鎮魂祭』


 彼女は、今日の日の事を説明している。今年に亡くなった人たち、今までに亡くなった人たち。


 その人たちに、どんな思いがあったか。皆の想いがある。そういう感じの話だった。


 普段の彼女からは、感じられない気品溢れる姿に、人々は聞き入っていた。


 彼女の最後の言葉と共に、一羽の白いフクロウが枝を咥えて、天高く飛びたった。


 そして、人々は街の水路に、紙で出来た小さな船に、火のついた蝋燭を立て、水に流す。


 そうして、亡くなった人たちの魂を、あの世に送るのだった。あのフクロウは、道先案内人(?)の役なのだろう。


 俺達は広場の水路に舟を浮かべ、亡くなっていった人たちに祈った。


 その帰り道、ラスディアに会った。


「あぁ、君たちか。……君とは随分、久しぶりだな」


 俺は、ずっと彼女を避けていたために気まずかった。


「……あいつの事なら、君が気に病むことではないんだ。あれは、仕方のないことだった」


「……はい」


 ラスディアの言葉が、強く心に刺さる気がした。


「それに、ウォルドの事は記録されている。会いに行くことも、出来ないことはない」


「……えっ?」


 どういうことなのか、俺は尋ねた。すると彼女は、特別にとセータから教えてもらったのだった。


 ――あの隠し部屋の書物に、ウォルドが記録されているのだという。


 それだけではなく、この世界の全ての生物どころか記録されている内容が召喚することが、出来るのだった。


 それとは裏腹に、彼女は悲しげな表情を浮かべて語った。


「……しかし、それは只の虚像。本物ではないんだ」


 その書物を、ずっと開いておく事は出来ず、必ず閉じなければならなかった。


 ――そう、以前おきた事件のような事が、再び起こさないために。


 しかし、その話に俺は思いついた事があった。


「……本当に、全ての事が起こせるんですね?」


「……アンロック、馬鹿な事を考えていないか?」


 ラスディアが、俺を止めようとした。俺は咄嗟に、彼女に電流を撃った。


「……何を……!」


 彼女は痺れて、座り込む。俺の体の中のバッテリーから、電流を流したのだ。


「ラスディアさん!」


 イニスが驚き、ラスディアを庇う。


「ごめん、イニス。ラスディアを頼んだよ」


 俺は踵を返して、走る。後ろから二人の声が聞こえ、辺りも騒がしくなる。


 それでも、俺は生物博物館に走った。博物館の入り口は、閉まっていた。


 俺は体の中の【そよかぜ】のパーツを駆使して、隠し部屋に向かった。


 ――その道中の、ギミックやトラップで、何度もやり直す事に鳴ったけど。


 そして、幾度の挑戦の後、書物の部屋までたどり着くことができた。


 セータかラスディアか、或いは別の誰かか――。とりあえず、追ってはまだ来ない。


 書物の入っている棚を、調べていく。やっぱりだ、生物や現象、名称の載っている書物。


 これは、【ゲーム】の【データ】だ。死んでしまった見知った冒険者の、データもある。


 この部屋は、いわゆる【デバッグルーム】なのだろう。だから、開けば召喚される。


 ――だとすれば、アレがあるはずだった。


 しかし、部屋の入り口が開く音が聞こえてくる。どうやら、追ってが来たようだった。


 ――急がないと。


 俺は焦り、一つの書物を手に取った。その書物のタイトルは、詠めなかった。


 ――もしかしたら、これか?


 俺は、その書物を開く。書物の部屋が消えて、辺りに草原が広がった。


 だけど、直ぐに草原は消えて、今度は宇宙空間のような所に変わる。


 それもまた消えて今度は、天空に浮かぶ大きな台のような場所。


 それから、闘技場、火山の近く、洞窟の中、城の家根の上など、様々な場所に変わっていった。


 まるで、場所を【ロード】して、探しているようだった。


 そして、真っ暗な世界になったとき、辺りは変わらなくなった。


『よくぞ、ここまでたどりついた!』


 突然、暗闇から声が響いてくる。声の方を振り向くと、巨大なドラゴンが現れていた。しかし――、


『我に、はむかうとは愚かな……』


 それは、先程の景色が変わるように、翼の生えた神々しい人の姿に変わった。そして、今度は、


『お前を倒せば、俺が一番なんだよ!!』


 まるで、格闘家のような格好の青年に変わる。まるで【バグ】っているようだった。


『貴様と対峙するのも、これが最後。そう、最後の決戦だ!行くぞ!』


 それは、忍者の姿になったときに襲いかかってきた。


 ――最後の決戦か。やっぱり、この書物は【ラスボス】の書物なんだな。


 つまり、こいつを倒せば、【エンディング】に向かう。強制的に、終わらせる事ができる。


 そうなれば、きっと元の世界に戻れるかもしれない。


 俺は、既に死んでいる。それでも、この世界から逃げたかったんだ。


 忍者の姿の【ラスボス】が、攻撃を仕掛けてくる。その前に【セーブ】をする。


 【ラスボス】の攻撃を受ける。直ぐに【ロード】して、その攻撃を避ける。


 俺は、この戦いかたで、幾つものモンスターや敵を倒してきた。


 相手の姿は、何度も変わった。それでも、何度も【セーブ】と【ロード】を繰り返して、攻撃をしていく。

 

 ――何度目の、【ロード】だっただろうか。突然、【ラスボス】の姿が消えたまま、現れなくなった。


「……終わったのか?」


 思わず、声を洩らす。これで、最後だったのだろうか。


『……もう、終わりにしよう』


 暗闇の中から、また声が聞こえてくる。しかし、先程の【ラスボス】達とは違い、落ち着いた声だった。


「終わり?じゃあ、【エンディング】に向かうのか?」


 姿は、現れない。俺は声の方に、聞き返した。


『……それは、ないよ』


 しかし、声の返答は俺の期待した、答えではなかった。


『確かに、私は【ラスボス】。しかし、これは虚像、ここで私を倒しても、【エンディング】にはならない』


 ――そうだった。ラスディアが言っていた事を、思い出した。それでも少しでも期待をして、ここに来た。


 ――でも、収穫はあった。少なくとも、【ラスボス】は居る。


 複数の姿があったが、書物を使わず倒しに行けば、【エンディング】に迎えるかもしれない。


「……そうか、じゃあ、ここでの事は無かったことにするよ」


 俺は、【メニュー画面】を開き、【ロード】を開く。


 ここに来る前の、クエストを終わらせた時の【セーブデータ】を、開こうとした。


 俺は鎮魂祭での件も、無かった事にしようとした。


 しかし、【ロード】出来なかった。


『それは、出来ない』


 【ラスボス】の仕業だった。


『お前の【力】は、知っている』

 

 奴は、俺の【力】に気づいてしまった。


『このまま消してしまっても、お前が戻った時に対策されてしまうだろう』


 奴は、俺の体を消していく――。


『だから、お前に二つの封印をする。一つは、その【力】。そして、もう一つは――』


 その言葉を聞き取る前に、俺は消滅した。



 ――一話目に、戻る。

『はい、というわけで、アンロック編の最終話でした』


「これで、ループする訳か」


『えぇ、時系列を説明しますと三話、六話、九話とアンロック編が続き、


 一話、四話、七話のアン編、もしくは、二話、五話、八話のロック編となり、


 どちらかの最後の後、一話、或いは二話の冒頭へ、そして【はじめから】で、別の世界にいくことになります。』


「あれ、別の世界?」


『はい、アンとロックの世界以外にも、世界がある設定ですが、このまま全体の最終話に進むことにしました』


「でも、次回は誰が主人公?」


『それは、次回でのお楽しみです』




以上です。次回で最終話です。面白くなるかは、わかりませんが、ここまで読んでいただきありがとうございます。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ