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鎮魂祭

 アン編の第三話です。

 少しダボっとした服にケープを羽織った姿の眼鏡を掛けた、黒い髪の毛のおさげの女性。


「初めまして、私が学長の【セータ・メビウス】です」


「は、初めまして……」


 俺とイニスは、緊張しながらも彼女と自己紹介を済ました。セータは、その場の四人を目配せをして、


「ところで、フリクスは一緒じゃないの?」


 彼女は、ラスディアとウォルドに質問した。――フリクス?いったい、誰の事だろう?


「いえ……村を出るときには、既に居ませんでしたが……?」


 ウォルドが答えると、部屋の窓の外からコンコンと、ガラスを叩く音が聞こえてくる。


「丁度、帰ってきたみたいだね」


 セータは、窓を開ける。すると、一羽の白いフクロウが入ってきて、部屋にあった止まり木に止まった。


 あぁ、このフクロウが、【フリクス】だったのか。そういえば、名前を聞いたことが無かった。

 

「また、寄り道してきたでしょう?」


 セータは目を細めて、フリクスに詰め寄った。フリクスは目をつむって、そっぽを向いていた。


 しかし、フリクスは机の上を見ると、ホーと一鳴きして机に飛び、空の皿を爪でつついた。


 彼女が占いをするために用意した、クッキー生地の乗ったケーキ。それが二皿、本に隠れるように重ねられていた。


「……また、二皿もケーキ食べたんですか?」


 ラスディアは、呆れた様子でため息を付いた。それに対して、セータは言い訳でもするように答えた。


「ち、違うよ!今回は一つだけだよ!」


 今回は、という言葉にラスディアたち三人(?)は、じとっとした目を向けていた。


 しかし、彼女の言っていることが本当なら、もう一つは誰が食べたのだろうか。


 と、噂をすればなんとやら。その件の人物がドアを開けて、入ってきた。


「おねえちゃん、新しい本……あっ」


 入ってきたのは、十歳ほどの幼い少年だった。少年は、俺たちに気付くと、俺たちから距離を取りながら部屋を回るようにして、セータの後ろに隠れた。


「【ルクス】、部屋に入るときはノックしなきゃダメだよ?」


 彼女は、少年の目線まで屈むと先程のマナーについて、注意をする。


「……」


 少年は今にも、泣きそうである。俺たち四人は、少年を不可思議そうに見ていると、少年の側から一冊の本が現れた。


 その本は、宙に浮かんでいた。俺とイニスは驚き、ラスディアとウォルドは警戒しだした。


 どうやら、二人も少年と謎の本については、知らないらしい。


 すると、謎の本の表紙から、髭や眉毛を白く伸ばした老人の顔が浮かび、喋り始めた。


「ホッホッホッ。そんなに目くじらを立てることも、あるまい。ただ、怯えておるだけじゃよ」


「【ジルアス】は、また甘やかす」


 セータは今の現象を、気にも止めずに謎の本、――【ジルアス】と会話をしている。


「……あの、何なんですか?」


 呆気に取られている俺たちの中で、イニスが口を開いた。それに、セータが答える。


「あっ、ごめんね。この男の子が、【ルクス・コート】。で、こっちの小うるさい本が、【ジルアス・ブックス】」


「は、初めまして……ルクスです」


「なんじゃ、小うるさいとは。……儂が、ジルアスじゃ」


 ルクスはペコリと、お辞儀をして、ジルアスは胸(?)を張るような動作をした。


「この子はねー、凄いの」


 セータは、まるで母親が自分の子供を自慢するように、ルクスの肩を抱いて、経緯を説明する。


 ――彼女の話によると、この博物館の大事な書物がある場所へと向かうための、隠し部屋。


 その隠し部屋の、ギミックを全て解き、封印された書物の一つのジルアスを呼び起こしたのだった。


 ラスディアとウォルドが知らないのも、仕方ない。彼らが任務のために、魔法学都を出た後の事だった。


「……というわけで、今はジルアスと一緒に【学長補佐】をしてもらっているんだ」


 ジルアスは元は人間で、自分の知識を残すために本になった。セータとは、人間だった頃からの知り合いらしい。


 ――そして、ケーキを一緒に食べたのが、ルクスだった。それでも、ケーキの皿は結構大きい。


 恐らく、少年は食べきれず、残しただろう。そして、それをセータは食べたと思った。


「それにしても、大所帯じゃのう」


「……そうだった。あの、お願いがあるのですが……」


 ジルアスの言葉に、思い出した事があった。――イニスの事だった。


 俺はイニスの件について、説明した。


「うん、大丈夫だよ。その子の事は、占いでも表れたから」


 魔道具技師に推薦した方には、伝えてあるそうだった。――彼女の所では、なかったのか……。


「あっ、ありがとうございます!」


 俺とイニスは、深々とお辞儀をした。ラスディア達も、安心した様子だった。


「ふー、これで一段落だな?」


 ウォルドは、一息つくように笑っていた。それに合わせるように、ラスディアも笑みをこぼしていた。


 ――あれ、一段落?何かを、忘れているような……。


 しかし何事もなく、俺とイニスは、推薦先の方に会いに行くことになった。


 

 推薦先の、小さな魔道具の工房にやって来ると、二人の老夫婦が出迎えてくれた。


「君たちが、占いの結果の子だね?」


「いきなりの、連絡で驚いたでしょう?」


 二人は、温かく迎えてくれた。俺たちは挨拶と自己紹介を済まし、話を聞く。


 老夫婦は、もう年なので隠居をするのだった。すると、この工房の席が空いてしまうので、相続者を探していた。


 その白羽の矢が当たったのが、俺と言うことだった。


「息子も居るのだけれど、少し心配でね。それで技術のある人が居れば、刺激を受けると思ってね」


 工房の流れについての、説明もしてもらった。わからない事があったら、その息子に聞けば良いとの事。


 大体の流れは、町や近くの村の治安を守る騎士団や、モンスターの討伐を主に行う冒険者。


 そういった人たちから、製作依頼で素材を受け取ったり、クエストを発注して素材を集めてもらう。


 そして、その素材で【魔道具】を造り、魔法学都の施設や、依頼人から報酬を受け取る。


 又は、魔道具の修理や修繕を行い、報酬を受け取る。……といった流れだった。


 殆ど、村で行っていた薬草からの薬品作りと同じだったので、イニスも大丈夫そうだった。


「ただいま」


 説明が終わる頃、誰かが帰ってきたようだった。


「おお、お帰り。」


「ただい……、もしかしてその人たちが、新しく入る従業員か?」


 ボサボサの髪に、丸眼鏡を掛けた男が部屋に入ってきた。どうやら、それが息子さんのようだ。


「あー……、初めまして、【セシル・グライエル】です。一応、工房の責任者やってます」


 彼は髪を掻きながら、自己紹介をした。――この人、責任者に向いているんだろうか?


 そんなこんなで、自己紹介を済ませた俺たち二人は、部屋に案内されて、荷物を下ろした。


 村の時と変わらず、二人部屋だった。――と、机の上にオルゴールが置いてある。


「……グライエルさん達のかな?」


 イニスは、それを見て言った。隠居する際に、もしこれを忘れていったら悲しいだろう。


 そう思った俺は、夫妻の元に持っていくことにした。先程の部屋に向かう。


『……が二人も、入ってきてくれるなんてねぇ』


 ――部屋のドアの前まで来ると、中から話し声が聞こえてきた。どうやら、親子で話をしているらしい。


『それも、女の子が二人』


『セシル、これは何かの縁。仲良くするんだよ』


『……あのなぁ、またそういう話に持っていく』


 ――何やら、怪しい内容。一体、何の話なんだろうか。


『お前も、もう良い年だ。そろそろ、結婚を考えるべきだ』


『私たちに、孫の顔を見せておくれ』


『……とにかく!僕は結婚とか、考えてないから!』


 セシルが、叫ぶとドアの方に足音が近寄ってくる。咄嗟に、ドアから距離を取った。


 すると、ドアが開くと共に、セシルと目があってしまった。


「あっ……どうも」


「あー……もしかして、今の聞いてた?」


 彼は気まずそうに、髪を掻いている。俺は、今来たばかりの風を装って誤魔化した。


「……何か、叫ぶ声が聞こえましたけど……?」


「いやー、何でもないんだ。気にしないでくれ」


 ばつが悪そうに、答えるセシルだったが、おれの持っていたオルゴールに気づいた。


「あっ……これ、部屋にあったんですけど」


「あー、そこにあったのか……」


 再び、セシルは髪を掻く。このオルゴールは彼が自作した物だった。


 オルゴールの蓋を開けて、中のゼンマイを巻く。


 ――オルゴールから、綺麗な心地よい音色が流れてくる。


「……綺麗な音色ですね?」


「そ、そうかな?」


 セシルは、少し照れ臭そうに、はにかんでいる。彼が言うには、これを一から造ったのだそう。


「これを、一人で一から……凄いですよ!」


 俺が、セシルの顔を見た途端、彼は急にそっぽ向いて早足で行ってしまった。


 去り際に、彼から【ハート】が上がっていたような。――そういえば、【パラメーター】を確認していない。


 ――やっぱり、セシルの【パラメーター】が追加されている。どれが上がったかは、分からないけど。


 他にも、セータとジルアスそして、ルクスの【パラメーター】が追加されていた。


 ――ルクスとジルアスも、攻略対象なのか。なんだか、混沌としてきたな。


 ふと、視線を感じた。どうやら、グライエル夫妻が、先程の会話を聞いていたらしい。


 ドアの隙間から、にやけた顔が見えていた。此方が気付くと、スススと離れていった。


 ――何だかなぁ……。


 そんなこともありながら、何だかんだで日々が過ぎていった。


 俺が気に止めていた、大きな事件も起きなかった。恐らくは、ルクスの影響だろう。


 本来なら、あの隠し部屋から事件が起きるはずだった。


 そこは覚えているけど、どんな事があったかまでは、思い出せなかった。


 そのお陰か、ウォルドが死ぬことも無くなったようだった。それでも、怪我をする事はあるけれど。


 それと、この魔法学都に来る前に撒いてしまった、煙幕の煙。


 あれは、結構な騒ぎになっていたらしく、その周辺の村に騎士団が派遣されたそうだ。


 そのせいで、ウォルドとラスディアが叱られたが、結果として盗賊団を捕まえることが、出来たそうだった。


 工房の方も結構、依頼が来るようになって、色々な魔道具を頼まれるようになった。


 ――そして、村を出てから半年が過ぎた。


「アン?遅れるよー?」


 イニスの急かす声が、聞こえてくる。俺は、魔道具の製作を止めて、イニスの元に向かった。


「あぁ、ごめん。キリの良いところまで、やっておきたくて」


「もう、こんな日にまで、やらなくても良いのに」


 あれからイニスは、大人っぽくなった。身長が伸びたからか、体型が変わったからなのだろうか。


 そのせいか、工房でも彼女を一目見ようとやって来る者も、多かった。


 来るなら依頼も持ってこい、とセシルは愚痴を溢していたけど。


 それから、イニスは月に一度、故郷の両親に手紙を送っている。どうやら、仲直りはしたようだった。


 そして、今日は魔法学都で、年に一回行われる行事があった。


 それが、【鎮魂祭】だった。


 俺たちは、街の広場へ向かった。工房の入り口で、二人の男女に出会う。


「セシルさんたちも、これから行くんですか?」


「ちょっと、遅くなったけどね」


 セシルと、彼の彼女だった。あれから、彼の元に想い人だった彼女がやって来た。


 俺やイニスは、彼と彼女を手助けしていた。そして、二人は恋仲になった。


 挨拶のついでにと、俺たちは新作の魔道具について話をする。 

 

 ――と、何やら彼の彼女が、セシルの腕を引いている。どうやら、ヤキモチを妬いているようだ。


「それじゃあ、俺たちは先に行ってますね」


 二人から、甘酸っぱい気配がしている。その場の空気に耐えきれず、二人から逃げるように、退散した。


 街の広場につくと、人々が集まっている。この中に、見知った仲の姿が見えた。


「ウォルドさーん、ラスディアさーん」


 ウォルドとラスディアだった。普段の鎧姿と違う普段着に、少し違和感がある。


「やぁ、君たちも来たか」


 挨拶も簡単に、二人の姿にイニスがクスリと笑った。と、同時に謝る。


「ごめんなさい、二人の普段着が珍しかったので、つい」


「まぁ、今日ぐらいは休業だよ」


「というよりは、同僚に休みを取らされた」


 二人は、気にはしていなかった。しかし、ラスディアは意味深な言葉を言った。


「これから、暫くは鎧は着れないからな。この姿の方が、珍しくなくなる」


 ――どういうことだろう?そういえば、少しお腹が大きくなっているような……。


「……あぁ!おめでとうございます!ラスディアさん、ウォルドさん!」


 その理由がわかったイニスは、大喜びで二人を祝福した。


 ――あぁー、そうか。


「おめでとうございます!」


 俺もイニスに合わせて、二人を祝福した。二人は照れ臭そうに、はにかんでいる。


「ありがとう、二人共」


 そういえば、数ヶ月前に結婚式をしていたっけ。なのに、早いなぁ。


「そう言うわけで、しばらく騎士は休業なんだ」


 ――と、人々から歓声があがった。広場の高台に、セータの姿が見える。


『皆さん、よく集まってくれました。今日は、鎮魂祭』


 彼女は、今日の日の事を説明している。今年に亡くなった人たち、今までに亡くなった人たち。


 その人たちに、どんな思いがあったか。皆の想いがある。そういう感じの話だった。


 普段の彼女からは、感じられない気品溢れる姿に、人々は聞き入っていた。


 彼女の最後の言葉と共に、一羽の白いフクロウ。フリクスが枝を咥えて、天高く飛びたった。


 そして、人々は街の水路に、紙で出来た小さな船に、火のついた蝋燭を立て、水に流す。


 そして、亡くなった人たちの魂を、あの世に送るのだった。フリクスは、道先案内人(?)のフクロウの役だった。


 俺が昔に聞いた話に、よく似ていた。俺たち四人も、水路の前まで来た。


 俺たちも、紙の船を浮かべて祈る。ふと、横を見るとラスディアの姿が見えた。


 きっと、亡くなった騎士団の同僚達に祈っているのだろう。

 

 ――この姿になる前の時は、ヴォルドの魂を送っていたのだ。


 しかし、今は彼女の隣にはヴォルドが居る。きっと、そして、反対隣のイニスは、自分の両親に……。


 ――まてよ、彼女の両親は死んでいないはず。確かに、手紙や生存も確かめている。


 では、イニスは誰を想って祈っているのか。それとも、ただ普通に不幸のあった人たちに、祈っているだけなのか。


 俺は、確かめずにはいられなくなっていた。


「イニス、誰を想って祈った?」


 すると、彼女は不可思議そうな表情を浮かべて答えた。


「誰って、【ロック】にだけど……?」


 ――【ロック】だって?それは俺が、この姿になる前に、性別を決めるときに決めた。


 男にしたときに付けるつもりだった、名前と同じだ。なぜ、同じなのか……。


「どうしたの?……あなたの両親と一緒に亡くなった、あなたの双子の弟」


「……弟?」


 そうか、俺には弟がいたのか。――何で、覚えていなかったんだろう。そんな俺に、心配そうなイニス。


「アン、忘れちゃったの?ロックの事」


 ――アン……と、ロック……。【アンロック】……そうだ、この日だ。


 俺が【ラスボス】に会って、この姿になったきっかけの日は……。


「……アン、大丈夫?顔色が悪いよ?」


「あ、あぁ。ごめん……大丈夫、ちゃんと覚えているよ」


 イニスは、安堵の表情を浮かべた。。覚えている――、といよりは思い出した。


 俺は、三人に気づかれないように広場をあとにした。向かうのは【生物博物館】。


 ――そう、あの隠し部屋の書物。その中の一つに、【ラスボス】が居たのだった。


 隠し部屋への通り道の、ギミックやトラップの解き方は知っている。しかし、トラップは無く、ギミックは死ぬようなものでは無かった。


 ――これなら、ルクスが無事にたどり着けたのが納得がいった。


 そして、隠し部屋の【ラスボス】の書物。書物のタイトルは、読めない文字だった。


 それを、開く。


 ――すると、辺りが真っ暗になる。【ロード】するときの、あの真っ暗な世界のような。


『……やぁ、やっと来てくれたんだね?』


 暗闇の中から、親しげに話しかけてくる声が、聞こえてきた。

俺は、その声の方を振り向いた。


「……お前は、誰だ?」


 それは、俺の知っている【ラスボス】の姿では、無かった。少し伸び気味の、金の髪をした男が立っていた。


『覚えていないのか……。僕は、自由に姿を変えられる、そう言っておくよ』


 妙な答えだったが、俺は更に質問をした。


「どうして俺を、この世界に送った?」


 同じ姿、同じ名前の人物は居るが、俺が【アンロック】だった頃の世界では無かった。


 男は、答えない。俺は、次の質問をした。


「あの時に救えなかった、ウォルドは助けた。それが、目的じゃないのか?」


『……やっぱり、思い出していないのか……』


 男は失望したように、ため息をついた。


『別に、ウォルドの生死は関係ないんだ』


 ――どういうことだ、別の世界に贈ってまで、俺に何をさせたいんだ?


『僕が、説明しても駄目なんだ。君が、思い出さないと……』


「――思い出す?」


 俺は、聞き返した。だが、男は自分の前に見覚えのあるものを出現させた。


 それは、【ロード画面】だった。男は、小さく頷く。


『うん、【セーブデータ】は残っているね』


「何を……、まさか、【きろくをけす】つもりか!?」


 俺が焦り、それを閉じようとするも、閉じなかった。男は、首を横に振り、否定した。


『違うよ、【ロード】するんだ』


 男が、【ロード】を選択した。真っ暗な世界が、明るく輝いていく。


「俺にもう一度、最初から始めさせるのか!?」


 男の姿は眩しさで、もう見えなくなっていた。


『【もう一度】?……もう、何度目だろうね?』


 男の声が、遠くなっていく。






 異世界転生をしたあげく、その時の【力】でラスボス(と思われる)にたどり着いた。しかし―、


『お前の【力】は、知っている』


 奴は、俺の【力】に気づいてしまった。


『このまま消してしまっても、お前が戻った時に対策されてしまうだろう』


 奴は、俺の体を消していく――。


『だから、お前に二つの封印をする。一つは、その【力】。そして、もう一つは――』


 その言葉を聞き取る前に、俺は消滅した。 


 ――真っ暗な世界。いや、世界ほど広いか狭いかは分からないけど。


「……また、ここに戻ってきたのか」


 死亡した時は……てっ、あれ?なんかおかしい。


「あぁ、でも意識があるってことは……?」


 封印は出来なかったのだろうと、【力】を使ってみる。


 すると【メニュー画面】が、目の前に現れた。


「何だ。使えるじゃないか」


 俺は、安堵の溜め息を吐くと、直ぐに【ロード】を選ぶ。複数個の【セーブデータ】がある筈だった。


「あっあれ?」


 しかし、そこにあった【セーブデータ】は、たった一つしかない。しかもよりによって、ラスボス手前のデータ。


「――封印って、こういうことかよ。これじゃ対策が難し……」


 だが、いくら選択しても【ロード】が始まらない。


「――もしかして……?」


 ラスボスの封印とは、【セーブデータ】を一つだけ残して消し、しかも選択出来ない様にすることだったのだ。


「うーん、どうしよう……?」


 真っ暗な世界で、あぐらをかきながら、漂っていた。本当に死ぬって言うのは、こう言う事なのかと、考えていると――。


「……あれ?こんなのあったっけ……?」


 閉じた筈の【メニュー画面】が、まだ開いている。


 そして、そこには【はじめから】【つづきから】【きろくをけす】と、書いてあった。



 ――続く。

『はい、と言うわけで、アン編は終わりです』


「ちょ、無限ループオチじゃん」


『えぇ、ここまではですが』


「じゃあ、分岐があると」


『はい、それと世界が違うということも、理由があります』


「ラスボスの姿は、ロックだよね」


『今回は、ですけど。そこは、最終回(予定)の時に』



 以上です。ここまで、読んでいただきありがとうございます。

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