2 事実を知らせる少女
『あははっ!! 固まってやがる~面白~い!』
無邪気を発するその邪気に嫌味が差す。
『固まってるけど、まっいっか! どうせただの落ちぶれだし~』
――隣から小さく舌打ちが聞こえる。
いらいら、しているのだろう。――もしかしたらだが――段取りが悪いから、かもしれないが――そうだとしたら、怖い話だ。
この状況でこんなことが思えたら、それこそサイコパスのようなものだ。
『まあまあ落ち着きなって~焦っても何もでてこないぞ~なんつって~☆ 人生もっと落ち着いて生きなって~』
こちらの機嫌を逆なでする声。
『まあでも、そんなに待ってくれてるなら~そろそろ開始しちゃいましょうかね~。お前らが後悔しないか、なーんて、私はとてもとても慈悲深いのでした~。はーいっ! 拍手拍手~☆』
スピーカー越しに手をたたく音が大音量で聞こえる。
――女の目的は何だ。僕達の判断力を鈍らせようとしている? それともただ単に――無邪気に、遊んでいる?
その態度に、心底イライラする。戯言ばかりで、耳に嫌に残る。
その声が、ようやくことの本題に入る。
それに僕達は唾を飲む。
『まあめんどくさいけど……――始めるかぁ……』
今までの能天気な声と打って変わって、聞こえてきたのはけだるそうな声。
『はーぁ……簡単に説明するわー。こんなん長引かせてもこっちも楽しくないし……――よーするにぃ~人が多いからぁ~人減らしてよ~』
「な、なんてこと……!」
『じゃあ五人まで減らしといて~よろしくぅ……――なーんか、興ざめしたわー。監視カメラでお前ら見て、勝手に楽しんどくし、てっきとーにやっといて~……」
プツン、という音がして、静寂が訪れる。
それが、本当に『人間選別』を行えという合図になった。
悪くもないスピーカーを睨み、女の子に向き直る。
それは、僕にはどうしようもないと、協力するという視線を送ったつもりだったが。
「私がやるわ」
どうやら伝わらなかったらしい。
「やるったって、何を」
彼女はため息をつき、僕のことを見下す。――精神的にも、物理的にも。
「さっき脈をはかってきて分かったわ。――あの中の五人は」
目の中に曇りを募らせて。
「人じゃない。――または、もう――この世にはいない者達だわ」
残酷に、冷徹に事実だけを並べて、女の子は言った。
だが、現状況においてはとてつもなく有益な話で。
――とても、辛い、悲しい話だった。