予後(命が生まれるってのはすごいことだな)
「助かったのか…?」
呟くように問い掛ける俺に向かい、
「はい。取り敢えず危機は脱しました」
とセシリアが微笑みかけてくれた。
「はぁ……」と大きな溜息が漏れる。俺自身も酷く体に力が入ってたことを自覚させられた。いやはやまったく、ハラハラさせられる。
さすがに無茶なことをしたので、密には念の為に治療カプセルに入ってもらうことにした。膣や子宮にも傷が付いてた可能性もあるしな。
万が一のことを考えて、治療カプセルはあらかじめ用意していたのだ。二つあるカプセルのもう一つには、後から生まれた赤ん坊が入っている。
この時に生まれた子供達は、刃の子は丈、密の子は先に生まれた方を焔、後に生まれた方を新と名付けた。全員男の子だ。これはまた騒がしくなるな。
それにますます調査内容をまとめるのが先になる。どうやら伏も妊娠したっぽいし、恐ろしいことになりそうだ。
焔に、密からセシリアが搾乳した乳を与えつつ光を見守りながら、俺はそんなことを考えていたのだった。
で、人間でも下の子が生まれたりするとよくあることなんだろうな。上の子がヤキモチを妬くというやつ。どうやら誉ががっつりそれだったらしい。以前にもまして行動が乱暴になり、治療カプセルから出て焔と新におっぱいをあげてる母親を、物陰から恨めしそうな目でじーっと睨み付けたりしていた。
すると、セシリアがそんな誉を抱き締めて、
「私もここにいますよ…みんなあなたを愛しています」
と穏やかに語りかけたりもしていた。だからか、誉はだんだんとセシリアに懐き始めたようだった。以前から母親の次くらいに懐いてるようだったが、それがますます進んだらしい。
またそれは、誉に母親離れを促したのだろうか。更に密林に入って遊ぶ姿が見られるようになった。これまでは何だかんだ言っても母親の姿が見えるところまでしか行かなかったものが、完全に姿が見えなくなるところまで行動範囲が広がっていた。
監視カメラ代わりのドローンや、対物センサーがあることで見失いはしないが、まあこれも、巣立ちに向けた変化なのだろう。あまり神経質にならないように見守ろうとは決めていた。
弟達が生まれて半年が過ぎる頃には、誉の体もさらに大きくなり、顔つきも赤ん坊のようなそれから、幼いながらも間違いなく<若者>っぽいものに変わっていた。まだ一歳半なのにな。体の大きさも四歳くらいって感じだろうか。
まったくすごい成長だよ。




