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母は強し(ってことかな。さすが野生、侮れない)

クモ人間がその場から逃走したものの、エレクシアの戦闘モードは解除されなかった。逃げたと見せかけてというのもよくあることだろうから、完全にその場を離脱し確実に状況が終了したと判断できるまで油断はしないのだ。


そして、再び樹上に跳び上がり、(よう)(しょう)の姿を確認した。


すると二人は、何事もなかったかのように、河の方に向かって滑空していた。(よう)が右の翼を庇い怪我をしているかのように見えていたのは、フェイクだったのだ。


鳥の中には、巣に外敵が近付くと親鳥がまるで怪我でもしているかのように振る舞って自分の方に誘き寄せヒナや卵を守るという行動をするものがいると言うが、この時の(よう)もそれだったのかもしれないな。自分が怪我をして飛べないのを装い、クモ人間の注意をひきつけることで我が子を守ったということか。


これは、親がどうやって子を守るかということをやってみせるという、実地訓練だったのかもしれない。


むう…『母は強し』ということだろうか。それをエレクシアの介入によってクモ人間を追い払ったことで台無しにしてしまったという一面もあったのではないかというのが頭をよぎってしまった。


ただ、(よう)の演技で(しょう)を守れたとしても、代わりに彼女を喪うというのは、やはり嫌だった。今では俺に甘えてくれなくなったといっても、そういう形で命を落とすこともあるのが野生だといっても、彼女も俺の大事な<嫁>の一人だからな。


それを俺の手で守れないのは我ながら情けなくても、どう考えたって、たとえ嫁が(よう)一人だったとしてもああやって向こう岸まで飛んでいってしまうようなのには俺はついていけないから、エレクシアに頼るのは当然の判断だと思う。と言うか思いたい。


人間は非力な生き物だ。それを補う為にエレクシアのようなロボットを作った。今回のことはそれを正しく運用したのだと。


自然の摂理として正しかったかどうかは、また別の話だとしても。


でもまあ、(よう)(しょう)にはそれだけの運があったということでいいんじゃないかな。


あんなことがあったというのに、二人はまるでいつもと変わらない様子で帰ってきて、ローバーの上で揃って毛繕いをしていた。さすがに毛並みが乱れてしまったということかもしれない。


あと、表情とかからは分かりにくいが、やはり本当は相当怖かったので、自分を落ち着かせる為に毛繕いをしているというのも有り得るな。実際、(よう)達にとっての毛繕いは、精神を安定させる為にも行われるらしいというのが分かっているしな。



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