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映像(あまりの迫力に言葉もない)

一瞬で対岸が迫り、着地するとそのままの勢いで密林の中へと走り込む映像がタブレットに映し出される。エレクシアの見ている光景そのものだ。ほんの僅かな躊躇もなく密林を駆け抜けていく。密林の中を飛ぶ小さな鳥の動きを真似ているドローンのカメラに映っている景色と言っても誰も疑わないだろう。


そして、さらに数秒で、今度は木の幹を駆け上がる光景が見えた。その先に、黒い影が映る。それがクモ人間の腹だと俺が気付いた時にはもう、エレクシアの両掌がそこに打ち付けられるところだった。


「ゴビュアッッッ!!」


エレクシアの聴覚センサーが捉えた、この世のものとは思えない声と共にクモ人間の巨体が浮き上がり、それから木の枝を押し退けつつ地面へと落ちていくのが分かった。それを追うように、画面も地面へと迫っていく。エレクシアが飛び降りたのだ。


その視線の先では、クモ人間がのたうち回って暴れ、体を起こす様子も見えた。


クモ人間の<頭>である人間体の部分がこちらを向き、まだ空中にいたエレクシアを迎え撃つ。女性の体をしているが、実は人間体の部分の見た目の性別とクモ人間自身の性別は必ずしも一致しない可能性があるのだが、今は余談か。


触角である手足に見える部分で攻撃を仕掛けてくる。しかしその程度では戦闘モードで全力稼働中のエレクシアにはまるで通じない。軽くあしらい、逆にビンタを食らわせる。


完全に手加減なしなら、最初の一撃でケリはついていた。腹に貫手を突き立てて力任せに引き裂いてやればそれで終わる。だが、俺達はここに狩りをしに来たんじゃない。クモ人間が生物としていくら規格外に強かろうが、エレクシアの前ではか弱い動物に過ぎない。彼女が本気で戦えば一方的な惨殺になってしまう。そんなことは望んでいない。俺はただ、(よう)(しょう)が無事に帰ってきてくれればそれでいいだけだ。


そんな俺の意図を、エレクシアはちゃんと承知してくれている。だからわざと殺そうとはしない。万が一、死なせたとしても彼女を責めるつもりはないが、死なせずに済むならそうしてほしいとは思っていた。クモ人間とて、この惑星に根付いたれっきとした生き物だ。こちらが生きる為に止むを得ずという場合を除き、できればそっとしておいてやりたかった。


(よう)(しょう)は俺の家族だから、黙って餌として提供はしてやれないというだけでしかない。


俺がそんなことを考えている間にも、触角による攻撃ではまるで歯が立たないということを察したのか、クモ人間は本体の脚を使っての攻撃に切り替えてきたようだった。


だがそれさえ、二脚であり接地面積が少なく、重量もクモ人間に比べて三分の一ほどしかないが故に地面との摩擦が足りないエレクシアの体を押し返す程度でしかなかったのだった。



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