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修行(さすが、本当に命懸けの修行だよ)

ところで、俺がこの惑星やそこに住む生き物に関して触れた内容については、すべて、その時点で判明していることを基にした推論に過ぎない。だから後々新事実が分かったりして説明が変わったりすることはある。それについてはご容赦願いたい。


で、前置きはこのくらいにして、今回は(よう)(しょう)のことについて触れようか。




(よう)は、娘が生まれてからは、俺のことを求めてこなくなった。それまでも一週間に一度くらいだったのが、まったくなくなった。その分、娘にご執心らしい。


産毛のようだった柔らかい羽が生え変わり、しっかりした翼になってある程度の滑空ができるようになると、(しょう)を伴ってこの家の周囲の木を飛び移って滑空の練習を始めたようだった。


その様子は何となく<教育ママ>って感じがしないでもない。子供達が暴れまわるのを完全に放置してる(ふく)とはまるで正反対のようにも見えた。


だがこれも、生態に伴う差なのかもしれない。陸上を走り回る(そう)達はただ鬼ごっこのようにして走り回ってじゃれ合ってるだけでもそれが十分に練習になるが、空を飛び上空から獲物を捕えるには地面を走り回るのとはまた別の技能が必要なんだろう。それを身に付けるには、遊んでるだけでは足りないのかも。


そんな教育熱心な母親のおかげか、(しょう)も実に巧みに滑空していた。空中での姿勢も安定していて美しい。母親とは大きさが違うだけでもう既に恰好だけなら一人前にも見えた。


だからか、(よう)(しょう)を連れて河の方へも出かけるようになった。河で魚を捕える為の練習なんだろう。他の子供達から目を離せないので、俺はエレクシアに命じてドローンで様子を窺うようにしてもらった。


もっとも、(よう)は、傍目には大変厳しいように見えても、(しょう)の傍を片時も離れようとせず、娘が魚を捕えるのを失敗して河に落ちそうになればそれを救い上げ、労わるように丁寧に毛繕いをしてやっていた。


厳しさの点だけで言うと、人間の場合でなら<虐待>を疑われるレベルではあるものの、それはあくまで人間の場合であって、彼女達には当てはまらないだろう。この前提をわきまえて見れば、厳しいがとても愛情に溢れた母と子の光景に思えた。


(しょう)もみるみる狩りの腕を上げ、一週間もすれば母親と比べても何一つ見劣りしないくらいになっていた。


「さすがですね」


ドローンを通してその姿を見ていたエレクシアが感心したように呟く。俺も、エレクシアが受信している映像をタブレットに転送してもらってそれを見た。


「本当だな」


だがその時、河辺の木の上で休んでい(よう)がひときわ高く飛びあがり、河の上を滑空し始める。するとそれを追うように(しょう)も飛び上がって滑空を始めた。どうやら河を飛び越えるつもりのようだ。


確かに、(よう)にとっては河の向こうも行動範囲だったな。その一方で、雨の日などで滑空距離が落ちてしまう場合に河を渡るサイゾウの背中に乗って移動する代わりに、俺達のローバーの屋根に乗ったのが出逢いのきっかけだった。


娘の(しょう)にも、同じことができるように指導するのが、母親の役目なんだな。


なお、雄は育児には関わらない、いや、『雌が関わらせない』と言った方が適切か?のようだ。


俺には(よう)と同じことはできないので、その点では助かってる。



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