表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

60/2984

誉(とにかくやんちゃ坊主としか言いようがない)

(ほまれ)については、とにかく<やんちゃ坊主>の一言だった。常に落ち着きなく動き回って家の中を走り回る壁を上る柱を上る屋根に上って滑り降りて飛び付く。もう、無茶苦茶だ。まさに動物園で見るサルの子供と同じだよ。


で、今の一番のマイブームは、<パパ上り>らしい。俺が立ってようが座ってようが上ってきて頭にしがみつき、


「うぉ~っっ!!」


と叫ぶのだ。


実は、密林の中から時々、似たような叫び声が聞こえることがある。どうやら縄張りを主張する為の行動と推測されていた。まだ一歳にもならないのに既に本能に従って自分の縄張りを主張し始めてるようだ。


が、それをすると(ひそか)が飛んできて首根っこをひっつかまえて地面に押し付けて首の後ろ辺りを噛む真似をした。最初は驚いたが、これが(ひそか)達にとっての教育なのだと思われる。この群れのボスは俺であり、この縄張りは俺のものなので、子供がそれを主張するというのは許されない行為らしい。


本来はボスである俺がやることらしいんだが、何せ捕まえようとしても全く追いつけない。(ひそか)と同じことができないのだ。なのでしかたなく(ひそか)がやってくれてる状態だった。


人間なら言葉で理解できるまで知能が発達し、自身の行動の意味も理解できるようになるからここまでやるとやりすぎになるが、彼女らの場合は人間のような形では物事を理解できないので、こういう形が必要になるということだ。


俺は別に、子供達を<人間>として育てるつもりはない。彼らには彼らの生き方がある。俺はどうせ、百年もつかどうかって感じでいなくなる。そうなれば彼らはまた、野生の中で生きていくことになるからな。あまり人間っぽくしようとは思わないんだ。


ただ同時に、(ひかり)はその姿も含めて野生としては生きていけないだろう。しかも、老化抑制処置も受けられない。つまり、長くても人間本来の寿命しか生きられないだろうということだ。恐らくこの環境では七十年も生きられれば長い方だ。もしかすると俺より先に寿命を迎えるかもしれない。


ここの自然の中では、(ひかり)のような個体は淘汰される側である可能性が高い。


だからこそ俺は、俺がいる間だけでもこの子を大切にしてあげたいと思う。


もっとも俺がいなくなったらいなくなったでエレクシアやセシリアが面倒は見てくれるだろうがな。


と、(ほまれ)の話をしていたというのにいつの間にか(ひかり)の話になってしまってたな。それだけ俺が(ひかり)のことを気にしてるということか。


…当然かもしれない。何しろ(ひかり)からは、亡くなった俺の妹の面差しも感じられてしまうんだ。


何だかあの子が俺の下に帰ってきてくれたみたいな気がしてね。


名前も、あの子の<光莉(ひかり)>から取ったものだったからな……。




評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ