明編 出逢い
ところで、鋭の部屋だが、よく日向ぼっこをしてるので、屋根に上って日向ぼっこをしやすいようにしつつ、その姿も光達の家からは見えないように工夫した。
順もよく屋根に上って周囲を見張ったりしてるからな。
それに加えて、光と灯も毎日、『大丈夫だよ』『心配ないよ』と根気強く説得してくれてるそうだ。
もっとも、いくら口でそう説明されたところですぐに納得できるものじゃない。こればっかりは時間が必要だ。
深の時は、パルディアに何となく似てるものの明らかにパルディアではないということもあってか割と早く大丈夫だと思ってくれたようだが、角はあってもどこからどう見てもマンティアンな鋭に対してはそうそう警戒は解けないだろうな。
しかも、和に対してもちゃんと仲間と認めてくれてるからか、
「マンティアンがいる! 危ない!!」
と、外に出ていこうとするたびに引き留めるそうだ。
しかしマンティアンの怖さを知らない和は外に出ていきたくて仕方ない。
で、順の目を盗んで出ていこうとしては連れ戻されるということが何度も起こるんだ。
仕方ないので、エレクシアを連れた俺が、和を預かる。すると、エレクシアと俺がいれば大丈夫ということで、ようやく外出を認めてくれるという。
いやはや。責任感の強い奴だ。
だが、ボスとしての自覚が芽生えてきてるということだろう。それについては素直に認めたいと思う。
一方の鋭は、そんな順の苦労を知ってか知らずかマイペースだった。
屋根に上って日向ぼっこをしていたかと思えばいつの間にかいなくなって、そしていつの間にか帰ってくる。
そもそも日向ぼっこをしてる時も、うっかりするといるのかいないのか分からない時もある。エレクシアやイレーネにはちゃんと見えているから確認もできるものの、俺が何気なく見ただけだと分からなかったりもするんだ。
それでも鋭はここに馴染んでくれてると思う。
ただ、ここにいると、パートナーは見付けられない可能性が高いだろうな。なにしろ、マンティアンが近付いてくればすべてエレクシアとイレーネがこっぴどく叩きのめして追い払うし。力の差を思い知らせて、二度とここに近付かせないようにする為に。
一度では懲りなくても、二度三度とエレクシアとイレーネぶちのめされるとさすがに現れなくなる。だからここにいると出逢いの可能性はほぼない。
鋭自身がそれをどう思うかはまだ分からないが、子孫を残さず命を落とすマンティアンも多いことから、それはそれで仕方ないのかもしれないな。




