誉編 参戦
誉達の参戦は、搭載可能な目一杯まで銃弾を装備させた拾号機と拾壱号機の弾薬が尽きるのとちょうど入れ替わりとなった。拾号機と拾壱号機が担ってた役割を、誉達が引き継いだ形になったんだ。
実弾を装備させていた拾号機と拾壱号機だと、下手をすれば誉達に当たってしまってたかもしれないから、その意味でも幸いだった。
しかも、それだけじゃなかった。
エレクシア達の間を、緑色の何かが奔り抜ける。
「明!?」
明だった。マンティアンであり、エレクシア達にはさすがに敵わないものの、動物という範疇ではおよそ最強と言っても過言じゃない彼女の動きは、嶽でさえ捉えきれなかった。
さらには、同じく緑色の影が。
「丈か…!?」
思わず口にした通りだった。明の弟である丈までが、戦いに加わっていたんだ。
とは言え、密林最強生物の一角であるマンティアンでも、さすがに嶽を倒しきれるような攻撃力はない。しかし、不思議とエレクシア達の動きに合わせて明と丈も動き、嶽の集中を乱してくれた。
俺の子供として生まれ、エレクシア達とも日常的に接してきた二人だからこそのものだったのかもしれない。
それどころかさらに、空中から急降下して嶽の目を狙う影まで。
「翔!? 彗!?」
鷹の子供達である翔と彗までが加わっている。
「はは…は。そうだ……あいつらはあいつらで自分の力で戦おうとするんだよな……」
その通りだ。
『俺が守ってやる』
なんて、とんだ思い上がりだったんだ。あいつらはあいつらで、自分を守る為に戦う力と気概がある。分かっていたはずなのに、俺はいつしか忘れていたのかもしれない。
とは言え、あいつらの力だけじゃ勝てる相手じゃないことも確かだが。
だから、攻撃の要であるエレクシアとメイフェアとイレーネは、誉達の加勢も<援護>という形で利用し、嶽の隙を突くように攻撃を加え続けた。
もちろん、誉達にも犠牲は出さないようにしながら。嶽が誉達に攻撃を加えようとすると、容赦のない一撃を食らわすんだ。
しかも、メイフェアとイレーネは、攻撃の瞬間だけに全力を出し、それ以外は出力を絞ることでエネルギーの節約に努め、長期戦に備えるようにしたようだ。
それにより、圧倒的な強さを持つはずの嶽も、大きなダメージこそはないが自らの集中を乱そうとするかのような波状攻撃を絶え間なく受け続け、さすがに疲れを見せ始めたのだった。




