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誉編 厳格な規定

ロボットは人間を傷付けることは原則できない。


ただし、要人警護仕様のメイトギアや、警察用および軍用のレイバーギアとかの場合、テロリストなどを制圧しないといけない事態は当然出てくるので、


<人命に対する急迫不正の加害行為>


に直面した場合には、実力を持って加害者を制圧することもできるそうだ。


もっともそれすら、一説によると二百項目以上の厳格な規定をクリアして初めてできることらしいけどな。


ちなみにその項目の詳しい内容については、多くの部分が第一級の機密事項だそうで、エレクシアに訊いても絶対に教えてはくれないが。


それでも、根幹部分については公開されているものもあり、それが、


『無辜の市民の身体生命を保護する為に、他に適当な手段がないこと』


というもので、かつ最も重要ということらしい。


で、その、


『無辜の市民とは誰を指すのか?』


『他に適当な手段がないとはどういう状況を言うのか』


といった部分で、ものすごく細かい規定がされているんだと。


ロボットはそれを、百分の一秒単位の速さで照合して対応するわけなんだが、適用されるのは当然のことながら相手が人間の場合に限られるわけで、それ以外の場合については<動物愛護法>などに基くことになる。


が、ここではそもそも<動物愛護法>が機能しておらず、相手も人間ではないし、となると俺が出した、


『殺すな』


という指示に反しない限り、容赦なく食らわせることができてしまうんだよなあ。


例えばマンティアンが<保護指定生物>だったりしたらまた事情は変わってくるものの、それも指定されてないわけで。


加えて、


『自分では絶対に敵わない危険な敵だ』


と認識してもらわないといけないので、申し訳ないが少々痛い目に遭ってもらうことになる。


イレーネはそれをしっかりと理解してくれていて、決して命までは奪わないものの、確実に手加減はするものの、まぎれもない<恐怖そのもの>として、若いマンティアンの前に立ち塞がった。


そうすることでほとんどの場合はもう二度とイレーネを狙わなくなるし、イレーネが近くにいるということで(ほまれ)の群れにも近付かなくなる可能性もある。


もっとも、『イレーネには近付かないが、イレーネから離れたパパニアンは狙われる』ので、残念ながら完璧ではない一面もありつつ……


まあその辺はいかんともし難い話だから、気にしすぎても神経をすり減らすだけで精神衛生上もよくないだろう。


これらの話は、当然ながらメイフェアでも同じである。(ほまれ)の群れに害をなそうとする者に対しては基本的に容赦はしない。


そしてイレーネも、呼吸が上手くできずにパニックを起こしもがく若いマンティアンにゆっくりと近付いて行った。


その恐怖たるや、さぞかし筆舌に尽くしがたいだろうな。



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