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誉編 妥協点

科学的医学的論理的合理的に冷静に判断せずに、血脈とか血統とかで判断するというのは思考停止であり、もはや<宗教>だと俺は思う。


これは別に宗教を否定してるんじゃない。信仰によって精神の安定を図り他者との共存に資するということなら、大変に有効なことだと思うよ。


だが、それを他人を攻撃する理由にしたり、合理的な判断を放棄するというのなら話は別だろう。そういうのは単なる<狂信>だと思われる。


信仰に縋ってる人間には、信仰の対象を疑うというのは苦痛を伴うかもしれないが、だからと言って他人を攻撃していいという道理もない筈なんだ。


それに、自分達が信じる教義だけを規範にして作られたコミュニティが長く平穏でいられたという事例はここまで存在しない。


そういうものを目指してこれまで無数のコミュニティが作られたが、そのことごとくが教義の解釈をめぐって対立し内紛を起こして瓦解したか、自分達のコミュニティ以外を敵視して事件を起こし、社会的に解体されたかのどちらかの結末を迎えている。


この種のコミュニティの中でも長く続いているものは、結局、自分達の信じる教義だけに拘るんじゃなく、他の価値観とも折り合いを付けていってる例に限られてるんだ。


自分達の信じるそれとは異なる価値観をある程度受け入れるという<痛み>を受け入れたことで、自分達の信仰のすべてを失うような事態を避けることができてるんだろうな。


結局はそういうことなんだろう。


今後ここにできていくかもしれない人間社会は、その辺りを上手くやれるだろうか。


信仰とかだけじゃなくて、自分達とは決して相容れない他の種族達と、痛みを伴いつつも折り合いをつけて共存していけるだろうか。


自分達だけが一切の痛みを免れるなんてことは現実には不可能だ。それを目指すということは、自分達以外の存在にその痛みを一方的に押し付けるということであり、それをされた側からは疎まれ、恨まれ、忌み嫌われることになるからな。


人間が法律によって人間以外の動物も保護するのは、それが結局、人間以外の生き物との折り合いをつけることになるからだ。


最終的には同族である人間を優先することになるとしても、いくらかは人間の側も譲歩しなければ大きな軋轢を生んで、手痛いしっぺ返しを受けることになる。


人間はこれまでそういう失敗を何度も繰り返してきた。その度に失敗の原因を探り、学び、妥協点を見出す努力をしてきた。


だからこそここまで生き延びることができたんだろうな。


俺もまさに今、この惑星に暮らす生き物達との折り合い方を探っているところだ。


それを伝えていけたらなと思うんだ。



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