誉編 人の世界
新暦〇〇二七年六月十八日。
今ではレッド達ももう成体になり、既に子供どころか孫さえいる。そのレッドの子供達や孫達も、俺達の庭に入り込んで遊んでる。なにしろ、レッドとブルーは雌であり<母親>なので、その子供達も母親と一緒に行動していたからな。
イエローは雄であることもあってその子供達はあまりこちらには来ない。母親である雌が来させないようだ。
しかも、レッド達は本来、駿と剛という番をボスに頂く群れに属してたはずなんだが、もう完全に独立した群れとして行動している。
また、駿や剛達は、レッド達のようには近付いてこない。
こういう風に、一律に慣れていくんじゃなくて、人間に慣れて行く個体が徐々に現れるという形で、ペット化していくんだろうなというのを改めて実感させられた。
なにしろ、レッドの子供達や孫達のほとんどは、俺達を全く恐れない上に攻撃的な態度も取らない。完全に俺達を<仲間>だと見做してるようだ。
俺やシモーヌや光や灯や順のような<人間の姿>をしてる者だけじゃなく、新達パパニアンや深達レオン及びパルディアも敵とは見做してないと思われる。
逆に、本来ならボクサー竜も獲物になりうる深も、レッド達とその子供のことは狙わないようになった。俺が何度も、
「食べちゃダメだぞ」
と教えたのもそうだし、それ以上にたぶん、俺がレッド達と敵対してないのを感じ取ったんだろうな。
その辺り、完全な野生動物よりは順応性も高いのかもしれない。
轟を襲った角のように野生そのものの姿も強く残す者もいつつ、徐々に変化は表れているんだと感じる。
それでいて人間も、多くの動物をペット化し家族のように接しつつも、牛やブタなどを食肉を得るための産業動物として利用しているんだから、角のことをとやかく言えないか。
遺伝的には純粋なパパニアンでありながら、人間、と言うか地球人と同じ姿をもって生まれた和におっぱいをあげている光のその向こうで、レッド達の孫達がじゃれ合って遊んでいる。以前は保も、レッド達と一緒に遊んでいた。そんなことを思い出しつつ、俺はぼんやりと考えていた。
それと同時に、いずれこの惑星に現れるかもしれない<人間の社会>にも改めて想いをはせる。
最初はきっと、それこそ小さな<村>のようなものができるだろう。<家>については、エレクシア達がいれば何も心配要らないと思う。そうして少しずつ<家>が増えていき、村が大きくなり、やがて<町>ができていくかもしれない。
おそらくそれが出来上がる頃には俺は生きてはいないだろうが、俺の子孫達はそこでどんな風に生きていくだろうか。