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誉編 修練

外敵に対しては容赦のない態度にも出る(ほまれ)だが、本質的には調和型の優しい気性の子なので、群れの仲間に対して強い態度に出るというのは本当は好きじゃないらしい。


ただ、<パパニアンの群れのボス>である以上は人間のような対応の仕方では必ずしも通用しないことも分かっており、故に自分に突っかかってくる若い雄については厳しい態度で臨むようにはしているようだ。


その際にも、メイフェア仕込みの<格闘術>であしらってみせる。


しかもそれは、ただ、真っ向から強引に突っ込めば逆にいいカモになる<技>であり、血気盛んな雄が飛び掛かれば、果たして何が起こったのかも分からないうちにクルリと体が逆さになり、制圧されるというものだった。


(ほまれ)は頭がいいので、相手の力を利用してバランスを崩しつつ体を入れ替えるというその<技>そのものをかなり理解しているらしい。ある程度は応用も効かせてくるようだ


ただしそれは、その技を知らない素人相手の<初見殺し>という面もある。


また、さすがに人間の格闘術の達人ほどは巧みでもなく、単純な<技比べ>なら勝負にはならないだろう。しかしその一方で、素の身体能力では、人間ではどれほど鍛えてもおそらくパパニアンには勝てない。


だからその辺りのアドバンテージを活かせれば人間相手なら負けないと思われる。


ただし、同じパパニアンが相手だと身体能力のアドバンテージは人間相手ほどではなく、しかも使う技は初見殺しに過ぎない以上、何度も使えば相手も当然、慣れてくる。(とどろき)もそうだった。


最初の頃は容易く圧倒されていた(とどろき)も、今では<技>だけでは容易には勝てなくなってきているらしい。


実に成長著しい、有望な雄ということでもあるだろうな。体もさらに大きくなりつつあるようだし。


この時も、(とどろき)は、(ほまれ)の<技>を何とか躱して、組み付こうとした。


「ぐあっ!」


「があっ!!」


短い咆哮がその場に響き、(とどろき)の腕が(ほまれ)を捉えると見えたその瞬間、逆にそれをがっちりと掴まれ、単純な力比べとなった。


こうなるともう、仮にもボスの座を得られるような力を持っている(ほまれ)がやはり地力で勝り、(とどろき)は身動き一つとれなくなってしまう。


「っぐあ、ぐぐっあ……!」


何とかそれを撥ね退けようとはするものの、今はまだ素の身体能力で勝る(ほまれ)相手ではどうにもならなかった。


「ぐ……ぐっあ、あ…っ!」


悔しそうに声を上げつつ、(とどろき)は木の幹に押し付けられ、勝負は決した。


だが同時に、(とどろき)自身が(ほまれ)の<技>を真似るような動きを見せ、本当に遠くないうちに技そのものを体得してしまいそうにも見えた。


もっとも、それもまた狙いでもあるんだろうけどな。こうやって群れの若い雄を鍛え、群れ全体の強さの底上げを図るっていう。



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