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誉編 横恋慕

野生の動物の群れは、人間の社会のように『仲良くすること』を必ずしも美徳とは考えないようだ。


これが人間の場合、最大の脅威は同じ人間なので、結局、人間同士仲良くすることが安全保障上も最も有効な手段だというのはあるんだろうが、野生の場合は、およそ仲良くなどできないまったく別の生物が大きな脅威であることから、とにかく<脅威を退けられる強さ>が最も重視されるんだろう。


他のパパニアンの群れや種族に比べるとそこまで<強さ>に拘る必要のない(ほまれ)の群れであっても、元々の習性は当然すぐには失われず、若い雄によるボスに対する突き上げは日常茶飯事だった。


その中でも、(とどろき)と俺が名付けた雄は、(ほまれ)の次のボス候補の筆頭と目されるくらいには実力のある若い雄である。


しかも(とどろき)は、(あお)に対して横恋慕しているらしい。


パパニアンの群れではカップルは必ずしも生涯添い遂げるというものではなく、ちょくちょくパートナーが変わることもある社会だった。


そのため、人間は<略奪愛>とか言ってやや忌避する傾向にある行為も、必ずしも禁忌ではなかった。


ただし、強引に雌を奪うというよりは、自分の力を見せ付けて、自分の方がより頼りになる雄であるとアピールし、雌の心変わりを促すという形だろうか。


というのも、選択権はあくまで雌の側にあるので、雄が雌に強引に迫るというのは御法度らしい。そんなことをすれば群れのすべての雌から総スカンを食らって、ボスの座に収まるどころか群れから叩き出される憂き目に遭うようだ。


いささか横暴で傍若無人なように見られていた(らい)ですら、雌を強引に組み伏せたりはしなかった。


まあ、求愛行動はしつこくてガサツだったりしたようだが。


そのせいもあって人望がなかったんだろう。


人間の社会でもそうだが、女性に嫌われると集団の中には居場所がなくなる傾向にあるようだ。


その点、(とどろき)はまだ紳士的ではあるらしい。


ボスである(ほまれ)の前ですら堂々と(あお)に対して求愛行動に出るが。


当然、(あお)は相手にしないものの、ボスの嫁に対してそういう真似をすること自体が不敬な行為なので、普通ならボスにボコボコにやられてもおかしくない真似だった。


それが当然というのがあり、そうしてボスが力を見せ付けるというのもあるので、メイフェア曰く、


(ほまれ)様としては嫌々ながらのようですが」


という感じで、自分の嫁に色目を使う(とどろき)に対して、


「ぐあっ!!」


と威嚇したりするのだった。



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