誉編 お前の子
先祖返りをおこした子を、誉は保護し、俺達のところに連れてきてくれた。
これで、同じような事例が誉の群れであった時には、同じように連れてきてきてくれるというのが確実になった。
本当ならさらに多くの群れでも同様の事例がないか確認したいところだが、さすがに際限なく監視網を広げていけるほどのリソースはない。
それに、タカ人間である灯の事例でも分かる通り、これはパパニアンの中だけで起こることでもない。理論上は、人間ベースの種族すべてに起こり得ることだった。
だからこうしてる間にも、どこかでそういう赤ん坊が生まれては命を落としていってる可能性がある。
それらすべてを救ってやれないのが悔しい。
悔しいからこそ努力をする。少しでも多くの命を救えるように。
とまあ気持ちも新たにしたところで、和の様子を見ると、光のおっぱいを貰っているところだった。
もっとも、あまりしっかりは出ないので、あくまで含ませているだけという感じだが。
足りない分は、光や灯を育てる時にも使った、コーネリアス号に保管されていたミルクで補う。
光がおっぱいをあげている間に灯がミルクを用意するという役割分担が既にでき上っているようだ。
俺も協力しようと思ってたが、この分だとあまり出番はないかもしれない。
いや、俺の役目もあるか。
なにしろ、自分の子じゃない子を育てている光に、順が不服そうな顔をしていたからだ。
俺は<父親>として、順に話しかける。
「お前の子じゃないからいい気はしないかもしれないが、心配しなくても光はお前の子も産んでくれると思う。それまで光と和を見守ってやってくれ」
「うぅ……」
十分に納得はできてないようだが、それでも順も頷いてくれた。
それに感謝する。
一方、誉達の方も落ち着いた様子だった。誉があの<不気味な何か>を捨てに行ってくれたことで動揺が広がらずに済んだようだ。
誉自身は、俺や光のことを見て育ったからまったく狼狽えることもない。
実に頼りになるボスだ。