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暮らし(単なるサバイバルではなくしていかないとな)

(よう)がすっかりローバーを気に入ってしまったらしいので敢えてカーゴスペースには戻さず、脇に停めて再びパラソルをルーフキャリアに括りつけておいてやった。もう完全に<巣>だな。


なお、普段の<足>としては、コーネリアス号にも搭載されていたローバーを持って帰ってきて使ってる。ブランゲッタがローバーにも搭載できるほどのサイズになる以前のものだから悪路を通ればそれなりに揺れるし、アミダ・リアクターも発明されてなかったからソーラーパネルとバッテリーで稼動するタイプと、俺のに比べればいささか古い(なのにデザインはいかにも未来的だったりする)。


とは言え、実際に使うのはセシリアCQ202が<里帰り>する時くらいだし、彼女としてはそっちの方がリンクもできるしで問題ないが。


と、それもさておいて。


生きている以上は食べるし食べれば出すものは出す訳だが、(ひそか)(じん)(ふく)も、自分の住処ではやらないという習性があるらしい。なので、最初のうちはわざわざ密林の中に行って済ましていた。しかし、俺がトイレを使っているとまず(ひそか)がその真似をし始めてトイレの使い方を覚え、次に(じん)もそれを覚えた。もしかすると(ふく)もその感じでそのうち覚えるかもしれない。


ちなみに(ひそか)は元々綺麗好きなこともあってか、トイレの後には尻を洗うという習性が元から備わっていた。トイレは風呂と一体のユニット式だからそのままシャワーで尻を洗いタオルで拭くということを自分で始めた。それまでは、例の水を貯える習性のある蔓植物のあるところで用を足して、蔓を歯で噛み切って水を出させて洗っていたようだ。その蔓植物は繁殖性が高く、切ってもそこからまた新しい芽を出して一日で数センチ伸びるから困ることもない。


(よう)はキャビンの中には入ってこないし、時折、餌をとる訳でもなくいなくなることがあるんで、やっぱり離れたところにしに行ってるんだろう。恐らくは、自分の住処を汚さないとか強い臭いをつけることで天敵をおびき寄せてしまうことを防ぐとかいう理由があるんだろうな。


(ちから)(はるか)の二人については、当然ながら流れのある川の中で済ましてるようだ。


ああ、(ちから)(はるか)ってのは、ワニ少年と透明なワニ少女のことだ。これまでと同じように俺が何となくの思い付きで付けた。


それで思い出したが、あの日、二人がいたした後で何気なく(はるか)を見たら、彼女の体が透明なもんで、(ちから)が彼女の体の中に出したものが透けて見えてたんだよ。なんて言うか、ああして改めて見せられると、こう、あれだ、いたたまれない気分になるな。性教育の授業を受けてる時のような。俺以外の誰もそんなこと気にしてないのにな。


エレクシアはまあ、


「なるほど。こういう風になる訳ですね」


と興味深そうではあったが。


あと、当然、食べたものが胃に溜まってる様子も消化されていく様子も見えてしまうんだが、これはまあ、二人とも大体いつも水の中にいるからそれほど気にせずに済んだ。


(はるか)が今の(はるか)になった翌日、河に戻してやろうとも思ったものの、何故か彼女自身が河に戻るのを嫌がる、と言うか、俺達の傍から離れようとしない?ので、結果として(ちから)も一緒にそのまま俺達の拠点近くに居座ることになった。


しかし、水生生物である二人は体が完全に乾いてしまうと具合が悪そうだったから、灌漑によって近くの川から水を引き、人工の小さな川と池を作った。幅は一メートルほど、深さは五十センチほどだが、もちろん魚も住める程度にはちゃんとした川だ。その川の一部を広く深くして、幅三メートル、深さ一メートルほどの池にした。そこが二人の住処になる。


その為の工事はなかなか本格的なものだったが、エレクシアの手に掛かれば二日で完成した。まず、小さな池を掘ってそこにポンプで汲み上げた川の水を溜め、さらに溝を掘って川に繋げるという手順だった。要人警護仕様のエレクシアの戦闘モードなら彼女が持つパワーを最大限に発揮できるので、小型の重機以上の仕事が可能になるのだ。これはあれだな、<塹壕掘り>の応用ということだな。要人警護の仕事で塹壕を掘るようなことはあまりないだろうが、一応、データとして入っていたそうだ。


さらに、コーネリアス号に積まれていたプレハブを連結させたものをベースに、周囲の木を伐採してそれを材料にして補強と内装工事を行い、宇宙船のキャビンとは別の<家>を作った。正直、(ふく)とセシリアCQ202まで部屋にいるとなると若干、手狭になったかなと感じたからだ。なお、この時に使った工具もコーネリアス号に積まれていたものである。継ぎ手や金具の類、及びプレハブを運搬する為のボートにもなるトレーラーそのものもコーネリアス号の工作室で作った。


もちろん俺も手伝ったが、こっちも基本的には作業の殆どをエレクシアが行った。生身の人間でしかない俺ではむしろ足手まといにしかならなかった気がする。せめてパワードスーツでもあれば多少は違ったかもしれないが、そもそもパワーの問題ではなく作業の速度が全く違うという点で話にならないけどな。休憩さえ要らない彼女に比べ作業できる時間も短いし。


とは言え、こうして作られていったそれは、(ちから)(はるか)の住処である池もその一部に取り込んだ形で完成した。


そう、<俺達の新しい家>だ。


そんなこんなで、危険な作業や重労働はエレクシアの担当。キャビンや<家>のメンテナンスと家事全般はセシリアCQ202の担当ということになった。


細かいことでは、俺の宇宙船のメンテナンスルームが、セシリアCQ202くらいに古いロボットには対応してなかったので、一週間に一度の割合でコーネリアス号に里帰りする羽目になったということもありつつ、俺達のここでの暮らしは着々と完成していったのだった。



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