表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

476/2945

誉編 日々 その2

他の群れとの小競合いが生じ、(ほまれ)の群れ全体にも緊張が広がっていた。


しかし(ほまれ)は慌てることなく、かつ引き締まった表情で現場へと急ぐ。


ボスに就任してからはまだ日は浅いものの、これまでにも散々対処してきたことだけに、ある意味ではあいつにとっての<日常>と言っても差しつかえないだろう。


とは言え、本当に些細なものであればボスである(ほまれ)まで出る必要はないので、今回はそれが必要なことだと、哨戒に出ていた若い雄の小集団のリーダーは判断したのだろう。


それに応じ、(ほまれ)はボスとしての役目を果たそうとしているのだ。


(あお)はボスである(ほまれ)をサポートするために同行しているのだと思われる。


(しずか)は高齢だし、(みこと)は子供達から目を離すわけにはいかないので、待機だ。ちなみに、(ほまれ)の息子の(たもつ)もすでに立派な<成体(おとな)だが、今回は別の小集団を率いて哨戒に出ていていない。


そうして(ほまれ)が駆け付けると、そこには向こうのボスの姿もあった。


双方のボスが駆け付けたことで、さらに緊張感が高まる。


共に若い雄が前に出てなおも牽制が続く。


その後ろで(ほまれ)と相手のボスが睨み合う。


これまでにも何度か顔を合わせているものの、(ほまれ)がボスになってからは初めてのはずだった。


すると、相手のボスが(ほまれ)の姿を見た途端に、明らかに嘲るような表情になる。ボスとしては若い(ほまれ)を見くびっているのだろう。


だからか、自分の群れの若い雄を押し退けて前へと出てきた。ボス同士の一騎討ち望んでいるのだ。自分の手で早々に決着をつけようと考えているかも知れない。


それを受け、(ほまれ)も前へと出る。


あいつにしてみればまさに望むところだっただろうな。だから一気呵成に奔った。


自分を舐めているうちに決めてしまおうということだろう。


若気の至りとばかりに前に出てくる(ほまれ)の姿に、向こうのボスはますます馬鹿にするような表情になった。向こう見ずで無鉄砲な未熟者と侮っているらしい。


だが、それこそが(ほまれ)の狙いだった。


掴みかかってきたボスの腕を取り、体をひねりながらわざと一緒に地面へと落ちていく。


「あいっ!?」


思わぬ攻撃に、相手が素っ頓狂な声を上げた。そして咄嗟に逃れようと足で枝に掴まる。


が、そうしたことで逆に(ほまれ)に取られた腕が余計に極まる形になり、


「ぎーっっ!!」


と悲鳴を上げた。


正直、かなり情けない感じの悲鳴だっただろう。ボスとしては、な。


勝負はその時点で決していた。腕を痛めた相手のボスは戦意を失い、一応、戦おうとはしているらしいが、はっきり言って逃げ腰だった。そのボスも、決して弱いボスではなかったはずなのだが、メイフェアに戦い方もみっちりと仕込まれた(ほまれ)を侮ったことで墓穴を掘ってしまった感じか。


彼にまんまとしてやられたという訳だ。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ