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誉編 碧 その4

ボクサー竜(ボクサー)をからかって遊んでいたパパニアンの子供が思わぬ反撃に遭い、食らいつかれて地上へと引きずり落とされた。


「うあ、あ。あぁぁあぁぁーっ!」


こうして取り付かれれば子供ではまったく勝負にならない相手に、その子は絶望の悲鳴を上げた。結末はもう決まっている。頸椎の辺りに強力な顎の一撃を受けて神経を断たれ、死に至るのだ。そしてボクサー竜(ボクサー)の腹を満たし、命を繋ぐ糧となる。


それが<摂理>というものだ。


しかし、だからと言って簡単に諦めるというのも違うのだろう。特に(ほまれ)は、そういう部分で諦めが悪い。自分が危機に陥ってもそうだが、仲間の危機についても黙ってはいない。


「がいっ!!」


一声上げて木を下り、仲間の下へと駆けつける。


と言っても、この時は相手のボクサー竜(ボクサー)も一頭だけだったので、その判断ができた。普段は群れで行動するボクサー竜(ボクサー)が一頭だけでいるのは、群れからはぐれたか、もしくは抜け駆けして自分だけが餌にありつこうとするかといったところだろう。運が良かったのだ。


これがもし、二~三頭の集団であれば、この判断はできなかっただろうし、しなかった筈だ。(ほまれ)はそういう分別が付いている。助けられると思ったからそうしただけだ。


しかも、動いたのは(ほまれ)だけじゃなかった。なんと(あお)まで木を下り、駆けつける。近付くのはギリギリ安全な位置までだが、


「あーっ! あーっっ!!」


と声を上げて跳び回り、ボクサー竜(ボクサー)の注意を逸らす。


そしてその隙をつき、(ほまれ)が至近距離から木の実や小枝を投げつける。


見事な連係プレイだ。


すると、(ほまれ)を威嚇しようとボクサー竜(ボクサー)がパパニアンの子供に食らいついていた顎を離した瞬間、その子供も飛び退いて木に掴まり、あっという間に安全なところまで逃げ延びた。


それを確かめた(ほまれ)(あお)も、すかさず離脱する。


こうして、パパニアンの子供は危ういところを(ほまれ)(あお)に救われる形で命を取り留めた。


その一部始終を、一緒に遊んでいた他の子供達やメイフェアが目撃していたが、子供達はただ何もできずに遠巻きに見ていただけだし、メイフェアは果実を手に取り、いざという時の援護の用意をしていたものの、結局、何もする必要がなかったのだった。


この時、(ほまれ)がそれをできたのは、メイフェアによる<指導>を受けていたからである。自身の身を守りつつ敵に最大限のダメージを与える方法を、みっちりと教え込まれていたからだ。


だが、そういう背景がある(ほまれ)はともかく、(あお)までとは、正直、驚かされた。


どうやら彼女は、メイフェアから指導を受けている(ほまれ)を傍で見ていて、自然とそれを身に付けたらしい。


ただの可愛らしい<お嬢ちゃん>ではないという片鱗が、既にこの頃から覗いていたということか。



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