表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

467/2932

誉編 静 その4

こうして再び不遇な時を過ごすことになった(しずか)だったが、仲間の多くはそれを自業自得のように捉えていたのか、彼女を気に掛けてくれる者は殆どいなかったようだ。


(ほまれ)を除いて。


(ほまれ)は、仲間から冷たく扱われる(しずか)に対しても、彼女の為に餌を取ってきたり、仲間から暴力を振るわれているとそれを庇ったりもした。


この際、(ほまれ)の味方になってくれたのが、この時点ですでにパートナーであり、(のち)に<第一夫人>ともなる(あお)だった。(あお)は三代目のボスの子だったが、(しずか)とは別の雌の子で、正直、彼女は(あお)のことをあまり快く思っていなかったらしい。


なのに(あお)の方は、(ほまれ)の母親代わりでもあった彼女のことは嫌いではなかったらしく、仲が良かったとまではいかなかったにせよ決して邪険にはしなかった。そして(ほまれ)がボスの座に着くと共に彼女を第二夫人としたことについても、反対はしなかったそうだ。


これによって再度、<ボスの妻>の座を得た(しずか)ではあったものの、今度はさすがに(ほまれ)の手前もあってか、以前ほどは横暴に振る舞うようなことはなくなっている。もっとも、微妙に<意地悪ばあさん>的なところは残っていて、特に若い雌に対しては少々横柄に振る舞うところは今も散見されはいるが。


そんな彼女も、パパニアンとしてはそれなりの高齢になり、以前ほどの迫力も影を潜めていた。おそらく、残された人生も長くはないだろう。


また、三代前のボスとの間には二人の子を生した彼女だったが、子供達は二人とも既に亡くなっている。一人は、生まれてすぐに。もう一人は、他のパパニアンの群れとの衝突の際に亡くなった。そう、他の群れとのいざこざで亡くなった<二人>のうちの一人が(しずか)の息子だったのである。


高齢の為か、(ほまれ)との間にはなかなか子供ができなかったものの、先日、ようやく三人目の子、(とおる)を授かった。


しかし、彼女は、年齢のこともあってか我が子の面倒をあまり見ようとせず、結果として、(あお)が自身の子、(たもつ)(みどり)の手が離れたこともあり我が子のように面倒をみることで、健やかに育っている。


そして今日も今日とて、(しずか)(とおる)のの相手をすることもなく、怠惰な様子で好きな果実を食べながらぼんやりと空を眺めていたりした。


その様子は、俺の妻で(ほまれ)の母親である、<(ひそか)>が老衰で亡くなる少し前の様子を彷彿とさせたのだった。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ