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誉編 命 その3

(みこと)の姿を捉えていたドローンは、あの時に起こった<事件>の一部も捉えていた。


「やはり……」


本来は木に上る能力を持っていない筈のグンタイ竜(グンタイ)がどうやって樹上生活をしているパパニアンを襲ったのか、その場に残されていた爪痕などから推測はしていたが、それが映像として捉えられていたんだ。


グンタイ竜(グンタイ)は、卵を産む役目である女王を除くと、外見上はヴェロキラプトルと呼ばれる恐竜によく似ている。ヴェロキラプトルに比べれば前足がしっかりと発達し、<手>として機能を果たすことが分かるという点が異なるものの、それでも木を上れるほどではない。


しかし、(きょう)と俺が名付けた個体は異常なほどに知能が発達していて、おそらくそいつが考案したのであろう、多数のグンタイ竜(グンタイ)が、組体操の<ピラミッド>の如く土台を作ってそこを駆け上り、樹上のパパニアンに次々と襲い掛かるのを映像で確認。


グンタイ竜(グンタイ)の基になったと思われる、姿もよく似たボクサー竜(ボクサー)が相手なら樹上に逃げれば安全だった筈がそうではないと分かった時の、パパニアン達の恐怖や絶望がどれほどだったのか……


一対一ならパパニアンでも何とか対抗できるものの、グンタイ竜(グンタイ)は本当にアリのように数が多く、ボノボ人間(パパニアン)一人に五頭も六頭もでは、それこそ多勢に無勢というものだった。


一人、また一人と、何頭ものグンタイ竜(グンタイ)に食らいつかれて地上へと引きずり落とされ、生きたまま貪り食われていく。


そして、仲間が次々と食い殺されていく中、一人たまたま少し離れたところに逃げていたことでそれを目撃しながらも生き延びることになった(みこと)の恐怖を思うと、胸が痛くなる。


だが、その光景の最中、この時点で既に通信装置が故障していたらしくメイフェアのリンクから離れていたそのドローンは、とうとう限界を迎えたのか突然映像が途絶えたのだった。


「なるほど……この後、縄張りを拡張する為に斥候として派遣された(ほまれ)に助けられて合流することになるわけだな」


記録されていた映像を見て、俺はそんなことを呟いていた。


すると一緒に映像を見ていたシモーヌが、


「でしょうね。(みこと)はまだこの時には小さくて上手く説明できなかったのと、はぐれた個体が合流するのは珍しいことじゃなかったから(ほまれ)達も気にしなかったことで、事情が伝わらなかったって感じですか」


と推測する。


それが分かると、(みこと)(ほまれ)の嫁になったことは、彼女にとって大きな<救い>だったのかもしれないな。



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