表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

460/2933

誉編 命 その2

木の上で怯える(みこと)の様子に、俺は、この時に起こったことを思い出していた。


詳しく触れるのも憚られるほど凄惨な出来事だったな。


なにしろ、二十人以上の群れが一つ、グンタイ竜(グンタイ)によって皆殺しにされたんだから、痛ましいとしか言いようがない。


と言っても、グンタイ竜(グンタイ)の方も生きる為には獲物を捕らえて食わなきゃいけないので、その辺りは割り切るべきことなんだろうが。


さりとて、このグンタイ竜(グンタイ)という生き物自体も自然の摂理からは外れた異常な存在だった訳で、こいつらが密林の動物すべてを食らい尽くし自滅するのをただ見ているか、自分達の身を守る為の生存競争として駆逐するかの選択を迫られた俺は、やむなく駆逐することを選んだのだった。


その際、グンタイ竜(グンタイ)の<女王>が、謎の不定形生物に襲われて死亡したコーネリアス号の搭乗員の一人、秋嶋(あきしま)シモーヌの遺伝子を基に生み出されたらしい、彼女そのものの姿をその体の一部に再現した<アリの怪物>のようなもので、この女王をめぐってメイフェアとエレクシアは対立することになったんだ。


秋嶋シモーヌの姿を再現はしていても、知性も記憶もまったく持ち合わせていなかったグンタイ竜(グンタイ)の女王は<人間>ではない為、むしろ人間である俺や俺の家族にとって命の危険もある<害獣>と認識できるエレクシアは、容赦なく駆除しようとした。


しかし、一方のメイフェアは、コーネリアス号で秋嶋シモーヌに貸与されたロボットとして彼女に仕えていたことから女王を攻撃できず、エレクシアから<秋嶋シモーヌの姿を再現した女王>を守る為にエレクシアと戦った。


が、いかんせん、二千年分の技術の開きがある彼女とエレクシアとでは、何世代も前のスポーツカーが最新のフォーミュラカーにサーキットで挑むようなもので、そもそも勝負にさえならなかった。俺が『メイフェアを壊すな』とエレクシアに命令したことがハンデになって多少は抵抗してみせたものの、そこに現れた(ほまれ)に、


『なにやってんだ!?』


とパパニアンの言葉で叱責されて隙ができ、そこを突かれて女王を駆除されるという結末だったんだよな。


もとより、明らかに人間じゃないグンタイ竜(グンタイ)の女王を守ろうとしたのも、彼女に装備された<感情(のようなもの)>の所為だし、このことからもロボットに人間の感情を再現することには無理があるから、何度も試みられては結局見送られてきたんだなあと実感したよ。




などということがあった陰で、(みこと)は壊滅した群れの唯一の生き残りとして隠れていて、どうやらその後(ほまれ)の群れに合流することで生き延び今に至る、ということのようだな。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ