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誉編 メイフェアの日常 その6

群れの食事が終わると、次は、若い雄達がいくつかの小グループに分かれて偵察と言うか哨戒に出る。


縄張りを荒らす者がいないか、何か危険な変化はないかを確認するんだ。(ほまれ)もこの群れに加わった時にはやった役目だ。


これで縄張りを狙う他の群れと衝突し、命を落とす雄も少なくない。しかし、それで死ぬような個体ではその後も生き延びることは難しいという意味もあるんだろう。


もっとも、この群れにおいてはそれもどこまで意味があるのかは疑問だな。


なにしろ、俺は、子供達を見守ることと、俺自身の<群れ>を守る為の早期警戒網として、コーネリアス号に残されていた大量の偵察用ドローン(総数三千機)を随時投入し、今では半径五キロ以内で一千機以上が飛び回って休みなしで監視しているから、異変があればそれらと常にデータのやり取りをしているメイフェアに情報が届き、必要とあらば彼女が先に対処するので、実質的には必要ないんだ。


それに、弱い個体を淘汰するという意味においても、実際には能力的に劣ってるという以上に<運>に左右されるから、本来は優れた能力を持ち有望とみられていた個体が命を落とす例も無視できないほどには多いので、果たしてどの程度の意義があるのやらって感じだしな。


それでも、一応は元々の習性なのでそれを尊重して、続けさせてはいる。


いるんだが、何か危険があればドローンやメイフェアがさりげなく援護するので、この群れではそういう形で命を落とす者は滅多にいない。よっぽど運が悪かったのか、出会い頭の事故のようにして最初の一撃が致命傷になって命を落とした者が何人かいただけで。


しかもその中には、(ほまれ)と並んでボス候補だった強い雄がいたりしたんだ。


これで俺は、『弱い個体を淘汰する』っていう話についてますます懐疑的になったな。


『死んだのが(ほまれ)じゃなくて良かった』とは、単純に思えなかった。


いくら死が隣り合わせのこの世界でも、『俺の家族以外の奴が何人死んでも構わない』とは思えないんだよ。


弱肉強食という言葉をよく耳にするが、それを言うのなら、この世界の生物ではおよそ勝てる道理のない強さを誇るメイフェアや、そのメイフェアですら足元にも及ばない戦闘力を持つ要人警護仕様のメイトギア<エレクシア>を従えた俺は、この世界のすべてを好き勝手に蹂躙していいのか?


って言われれば、それも違うと思うんだ。


つまり<弱肉強食>という言葉も、この世界の理を正しく表してるとは、俺には思えない。


そんな訳で、俺はこの世界を好き勝手に改変しない代わりに、俺の身近な者のことに関しては、多少の我も徹させてもらおうと思ってる。



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