並んで眠る光と順(見守るしかない)
怪我の治療の為に治療カプセルの中で眠る順の隣で、光ももう一つの治療カプセルに横になった。
酸素マスクをつけた彼女を、ナノマシンを大量に含んだ溶液が包んでいく。
「じゃあ、ゆっくりとお休み。その間に終わってるから」
「……」
声を掛けた俺に、光は黙って頷いた。
治療用ナノマシンは睡眠も促してくれて、スッと眠れてしまう。
さて、これで本当に、後は終わるのを待つしかない。
順の方は特に深い傷とかが回復するのにまだ一週間ほどはかかるようだが、光は基本的には健康体だから、まあ長くても二日で終わるらしい。
並んで眠る光と順を、俺達は見守った。
もちろんその間にも生活はある訳で、そちらも淡々と過ごす。
調査の仕事はしばらく休みだ。二人をそのままにしてここを離れる気にもなれないしな。
だから俺も、密や伏との時間をゆっくりと堪能させてもらった。
昼間は密、夜は伏というように、それぞれ住み分けるようにして時間をずらして甘えてくる。もちろんそれは、昼行性、夜行性という元々の生態の違いもあるにしても、夜行性のライオン人間である伏も昼間はずっと熟睡してるかと言えば必ずしもそうじゃなくて、寝心地のいい場所を求めてウロウロしたりすることもあるし、腹が減れば狩りをすることだってある。
しかしそれでも、密が俺に甘えている時は、割り込んでまで甘えてはこない。
最初の頃は、それこそ俺をめぐって殺し合いまでしかねないほどにライバル心を剥き出しにしてたのにな。いつの間にかお互いの距離感を自分達なりに見付けたらしい。
それくらいもう、長く一緒にいるということか。
人間の一夫多妻制だと、案外、ここまで上手くいくことって少ないのかもしれないな。互いにあれこれ考えてしまって、少しでも自分の方が有利になるようにみたいな駆け引きを演じてしまったりということもあるみたいだし。
そりゃまあ密達の間でもそれなりに駆け引きのようなことはあったのかもしれないが、人間がやるそれほどはドロドロもしてない気もする。そこまで欲深くないからか?。
俺としても、無駄に争わずにいてくれるのはすごく助かった。ズルいかもしれないが、俺は、密も刃も伏も鷹も、そしてエレクシアも好きなんだ。それぞれが<家族>として大切で、今さら取捨選択なんてできない。それをするなら、最初のうちにやるべきだったな。
だが、最初に取捨選択しなかったことを、今はむしろ良かったと思ってる。
彼女達のおかげで、今の俺の幸せがあるんだから。