あの子達の成長を（見守れるのが）
新暦〇〇二四年十月四日。
「おと…さん、おあよ」
朝、順がそんな風に俺に声を掛けてきた。
『お父さん、おはよう』
と言ってるつもりなんだろうな。
「ああ、おはよう」
たどたどしくてもとにかく俺に挨拶をしようとしてくれてるのが健気で、自然と笑顔になってしまう。
もし光のパートナーになるなら俺にとっては義理の息子になる訳だから『お義父さん』と呼ばれるのも当然だし、今から慣れておいた方がいいか。
今日は光達チームBが調査に出る順番だ。
「いってきます。お父さん」と光。
「いってきま～す」と灯。
「いってまいります」とイレーネ。
「いって、きあす」と順。
なんか、それだけのことなのに、胸が熱くなる気がするな。また一人子供が増えた気分だ。
順は、光を守ってくれるだろうか。
いや、もちろん守ってくれるんだろうが、＜心の支え＞という意味でも守ってくれるのかなと思ってな。
そんなことを考えながら、俺は、シモーヌと一緒に四人を見送った。
「成長してるんですね。みんな……」
不意にシモーヌがそんなことを言う。たぶん、順の変化も含めた話なんだろう。
「ああ…そうだな……」
俺もしみじみと応える。
あの子達の成長をこうやって見届けられるというのは、本当に幸せだよ。
だが、そうして光達を見送った後でデータのチェックをしていた俺に、エレクシアが、
「マスター、順が怪我をしたそうです。急ぎこちらに戻ってくるので、治療カプセルの準備をしてほしいと光が言っています」
「なに……！？」
いきなりの話に、俺は軽く混乱していた。混乱しつつも言われた通り光莉号で治療カプセルの準備を始める。そんな俺に、イレーネからの詳細な報告を基に、エレクシアが説明してくれた。
「今から十三分前、カマキリ人間の接近を察知したイレーネが対処に向かっている僅かの間に光がボクサー竜の襲撃を受け、それを守ろうとして順が負傷したということです」
なるほど。そういうことか。
「光の力であれば、ボクサー竜の斥候程度なら十分に対応できたのですが、順にはそこまでは理解できなかったようです。光を守る為に突貫。数か所を噛まれ重傷であると」
「そうか…命に別状はないんだな？」
命に係わるような傷ならそう報告があるはずなので、それがないということは、重症ではあるが致命傷ではないということだと俺も察した。
「はい。ですが傷は深いので、救急処置は済んでいるものの予断は許さないとのことですが」
