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捜索(マジで宇宙船だったとはね)

さらにドローンで調べると、やはり植物で覆われてはいたがハッチが開いた状態になっているのが分かった。


「よし、そこから中に入って調べてみよう」


俺の指示に「承知しました」とエレクシアが応え、ドローンを侵入させる。全長三センチほどの小型であることを活かし、植物の隙間をくぐることができた。


「かなり旧式の宇宙船ですね。ただ、状態は悪くありません」


内部にまで植物が侵入してはいたが、確かに傷みはそれほどでもないようにも見えた。


「機能は完全に失われているようです。人の気配もありません」


船内を三機のドローンを使ってくまなく捜索する。ドローンではドアは開けられないから閉まっているところは仕方ないが、とにかく入れるところは確認しないとな。


奥深くに侵入すると通信状態が悪くなってきたので、さらにドローンを投入。それぞれを中継器代わりにして通信を確保した。


「銘板を発見しました。進宙、銀河歴一〇三七年。建造、JAPAN-2(ジャパンセカンド)重工。船名、トリトン級七番船コーネリアス。やはり地球の船ですね」


情報を読み上げるエレクシアに俺は大きく頷きながら呟いた。


「なるほど。これでますます(ひそか)達はこの宇宙船の乗員の末裔という可能性が高くなったな。だが、銀河歴一〇三七年と言えば、確か二二〇〇年程度前じゃないか。それでここまで言語も知識も知能も失われた上に姿形まで変化するというのはやっぱり解せないが…」


地球人が太陽系から銀河系へと進出した頃に西暦から銀河歴に変わり、恒星間航行技術を確立してさらに活動範囲を広げたことで銀河歴から星歴に暦が変わったんだが、その間にもいろいろなことはあった。これもその中の一つということなんだろう。


とその時、エレクシアが声を上げた。


「マスター。生物の痕跡を発見しました」


そう言われてモニターを見ると、そこには植物を積み上げてまるでベッドのようにしたものがあった。それを見た瞬間、ピンとくる。


「これ、(ひそか)が作る寝床に似てるな」


「ですね。おそらくその通りだと推測します」


ハッチが開いていたから、そこから侵入した何者かがここを巣にしていたんだろう。ということは他にもいる可能性があるな。


生物にとってはこの宇宙船の内部は洞窟のようなものだ。となれば洞窟を住処にする生き物がいるようにここに住み着いたのがいても何も不思議じゃない。


だが、自然にできた洞窟の中には何だかんだといって水があったり苔などの植物が生えていたりと生物が生きる為の環境があったりするものだろうが、完璧な気密性を持ち水などが浸入する余地のない宇宙船の中ではさすがに生物が普通に生きるには厳しい環境だったらしく、たまたま迷い込んだのであろう生物の死骸が散見される以外には生きているものは見られなかった。


長い航海に備えて宇宙船内で自給自足する為のプラント跡と思しき設備も見付かったが、宇宙船の機能が完全に失われたことで維持できなかったのだろう。干からびた植物らしきものの残骸が残されているだけだった。


居住スペースにも、日用品などが散乱している様子は見られたが、人間の姿はどこにもなかった。危険な生物も見当たらない。


宇宙船の周囲にも特に危険はなさそうだ。


「それでは、私がまず確認してきます」


「ああ、頼む」


ローバーを宇宙船のすぐ傍まで移動させ、エレクシアが中を確認することになった。また、ローバーから電源をとり、いくらかの機能を回復させられないか試すことにもする。


宇宙船の大きさは全長二百メートル級で、中型クルーザー的なものらしい。さすがにすべての機能を回復させられるほどの電力を生むだけの能力はこのローバーにはないが、一部なら何とかなる可能性もあるし、情報端末の機能を回復させられればさらに多くのことが分かる筈だ。


無線給電機を持って、エレクシアがハッチから入っていく。(ひそか)(じん)は見慣れない環境を警戒してか外に出ようとしないので、俺と一緒に待機だ。


エレクシアの視覚情報をローバーのモニターに表示させると、ドローンカメラ以上に鮮明で視野の広い映像が映し出された。


「船内の探知できる範囲内には、バイタルサインは確認できません。まずは操舵室を調べてみます」


と言うエレクシアの動きに迷いはない。ドアは電磁式だが手動でも開閉できるタイプだったので、苦もなく先に進めた。用心の為、ドローンをまず先に進めてからだが。


無線給電機を途中でいくつか設置していく。情報端末が充実しているであろう操舵室に給電する為に、無線給電機をリレーして電気を送るのだ。


それにしても、エレクシアの目に映る宇宙船内の様子は、さすがに俺の目には古めかしく感じられた。これでも当時は最新鋭の探査船だったんだろうが、時代の移り変わりというものなんだろうな。機能そのものは大きく変わらなくても、意匠が微妙に古臭い。これが当時の最先端だったんだな。


なんてことに感心しているうちに、エレクシアは操舵室へと辿り着いていた。もしかしたらドアにロックが掛かっていたりするかもしれないとも思ったが、もうその必要もなかったんだろう。呆気ないほどにすんなりと中に入れたのだった。



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