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密接(ますます親しみを感じてしまうな)

エレクシアに説教されて、俺は改めてロボットは道具なんだということを思い出していた。道具であるロボットを変に気遣って人間が危険に晒されていたのでは意味がない。それはロボットの存在意義を蔑ろにすることなんだと今さらながら実感する。


あまりに人間そっくりに作られていることでつい後ろめたい気分になってしまうこともあるのは、メイトギアの欠点だな。これが、外見がいかにもロボット然としているレイバーギアならまだ割り切れるんだが。


夕食の後で(じん)が日課の擦り付けをしてきた後で寛いでいると、今度は(ひそか)が俺の体にしがみついてきた。いつものあれだ。


ワニ少女のことで慰めてもらったこともあってか、今日はこれまで以上に二人のことが可愛く感じられてしまう。だからつい、(ひそか)の体を撫でさすってしまった。今まではなるべく勝手にやらせておくだけにしてたんだが。すると彼女はますますうっとりとした、だが同時にどこか切なそうな表情で俺を見た。紛れもなく誘ってる顔だ。俺を受け入れたいと願ってるんだ。


俺自身も気分が昂ってしまうのも感じる。これは本当にそう遠くないうちに我慢ができなくなってしまうかもしれないな。


何となく気恥ずかしくなってふと視線を逸らしてしまう。すると俺が見た先にいたエレクシアが、察したように俺に言った。


「私に遠慮しているのでしたら、スリープモードに入りますが?」


って、気を利かせすぎだ!


「いや、いい…」


余計に恥ずかしくなってしまったじゃないか。


するとエレクシアは、淡々と語りかけてきた。


「既にお知らせしていますように、彼女達は肉体の構造的には人間と変わりません。十分に人間の女性と同じように接することができるのです。彼女達がそれを望むのなら、それに応えるのも愛情というものではないでしょうか?


もちろん、人間社会においては異種間での行為には背徳感がつきまとうでしょうし、同時に複数の女性とそのような関係になることは、マスターがいらっしゃった惑星では好ましくないものとされていました。ですが、ここはそのような社会的倫理観とは隔絶された世界です。さらには、『郷に入っては郷に従え』という諺もあります。


もし、マスターが彼女達を愛おしいと思い、その欲求がおありでしたら、無理に我慢をなさるよりは最後まで行ってしまった方がいいと私は判断します」


「…さすがロボット。判断が合理的で割り切ってるな」


確かにエレクシアの言うことにも一理あると思う。俺も彼女達を受け入れてもいいかなと思ってたりもする。だが、人間はそこまで端的に割り切れないもんなんだよ。


だが、悪くない。今日のことがあって、俺はますますそう感じていたのだった。




翌朝、朝食用の食材を調達しに行っていたエレクシアが思いがけないことを言い出した。


「マスター。人工物と思しき反応が、この先、五キロほどの地点にあります」


「なに!?」


昨日は違う方向に行ったことで気付かなかったものが、今日向かった方向の先に辛うじて探知できたらしい。昨日の予定ではこのまま引き返して宇宙船まで戻るつもりだったが、さすがに人工物となれば確認しない訳にもいかないな。


そこで俺は、さらに川を遡上して確認に向かうことにした。


(ひそか)(じん)も朝食を終えたし、ローバーの屋根の上に完全に居ついてしまった鳥少女も自分で狩りをした魚で朝食を済ませたのが確認できたことで、さっそく出発する。


行程そのものはこれまで同様順調だった。三十分ほどでエレクシアの言う反応の近くまで来る。


「やはり人工物ですね。植物に埋もれてはいますが、その中に加工された金属の反応があります」


そう言いながらエレクシアが指差した方向に、ぽつんと、小高い丘のようになった場所があった。これといって目印になるものもない平原だったので、そこだけが妙に目立つ。


「よし、まずドローンを飛ばして確認しよう」


いきなりエレクシアを向かわせて万が一のことがあっても困るので、念の為にドローンで捜索し、安全が確かめられたらローバーを近くまで移動させて調査することにした。


マイクロドローンを三機放って、接近させる。エレクシアはそのカメラを自分にリンクさせ、俺はモニターで映像を見る。


その小高い丘のようなものは、やはりただの丘じゃなかった。自然にできたものにしてはシルエットが綺麗すぎる。長さ二百メートル強、幅七十メートル強。しっかりした流線型で、まるで、宇宙船の上に土が積もってそこに植物が生えたかのような形にも見えた。それに気付いて、俺も自分が興奮しているのを感じた。


異星の文明にしても、俺より先にここに不時着した人間達のものにしても、かなりの発見には違いない。それに、これで(ひそか)(じん)のルーツが分かるかもしれない。


それの周囲を旋回し、画像を入念にチェックする。すると決定的なものがそこに見えたのだった。


「キャノピーだ。間違いない。こいつは宇宙船だ!」


そう、船首と思しき辺りを調べた時、植物に埋もれて分かりにくいが、確かに宇宙船のキャノピーがあったのである。



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