能力の違い(個性とはまた別のものだな)
「見た目はザクロモドキに近いですが、これまで発見されていない果実の可能性があります」
灯が見付けた果実を光がナイフを使って採取。それをイレーネが詳細に確認し、外見上から分かることとしてそう告げた。
「私よりも先に見付けるとか、すごいね」
光が淡々とした感じながら言った。仏頂面にも見えるが、俺には分かる。ちゃんと感心して褒めてるんだ。
「うひひ~♡」
大好きなお姉ちゃんに褒められて、灯はすごく嬉しそうだった。
「でも、ぜんぜん色が違ってたよ。すぐに分かったよ」
とは、灯の弁。と言うのも、彼女は、タカ人間の能力の一部を受け継いでるのか、普通の人間の目では捉えられない波長の光まで見えるらしい。紫外線も彼女には見えるんだ。そのせいで、色が違って見えるんだろう。
人間社会だとそういうのは<色覚異常>と見做されてしまう可能性があるが、本来の彼女らにとっては、密林に隠れた獲物もすぐに見付けだせるようにと獲得した能力だろうから、そういう風に見えない方が<異常>な訳で、何をもって異常とするかっていうのも結局はその時々の都合なんだなっていうのを感じてしまうな。
灯にもその辺りのことはもう告げてある。自分が見えているものと、俺達に見えているものとは必ずしも同じじゃないっていうのはね。そしてそれが<普通>なんだと。
だから灯は、自分が俺達と違ってたとしてもそれを気にすることはない。むしろ、
「じゃあ、パパ達には見付けられないものを私が見つけてあげる!」
って自慢そうに言ってくれる。それがまた頼もしくて。
<個性>とかそういうことじゃなく、それぞれが必要だから身に付けた能力なんだから、とやかく言う必要はないんだ。
…いや、逆なのかな? 元はと言えばあの不定形生物由来の生き物である灯達の場合は、自分達の能力に合わせて生態を変化させてきたって感じかもしれない。
まあそれがどちらにせよ、現状では能力が生態と密接に関係してるんだから、それが必要っていう意味じゃ同じだろう。
あの子達の生態や能力が影響してることについては、なるべくこっちが合わせてやるのが筋だと思ってる。
どうも人間ってのは、ついつい『相手が自分に合わせてくれるのが当たり前』っていう発想をしがちな生き物みたいだからな。意識してこちらから合わせるようにしないと。
俺に合わせて窮屈そうにしてるあの子達の姿なんて正直見たくない。命の危険がない範囲でなら、活き活きしてるあの子達を見てたいからな。




