キャサリン編 透けて見えて
どんなに慎重に選別しても<完璧な人間>というものがいない以上はある程度のトラブルも想定しておかないといけないと思う。それを想定せずに綺麗だけで全てをどうにかしようとしても上手くいくはずがない。
『みんな仲良く』
なんてのは俺が子供の頃にも学校でよく聞いた文言だが、それが<上辺だけの綺麗事>でしかないのは当の大人が実際の振る舞いで示してくれている。俺の両親でさえ実は親戚とはあまり良好な関係とは言えなかったそうだ。表立って露骨にいがみ合うわけじゃないものの、取り敢えず顔を合わせれば笑顔で会話を交わしたりはするもののあくまでも社交辞令でしかないのは俺もなんとなく感じ取っていた。
で、それが俺自身にも実感できたのは光莉のことがあってからだな。それ以前にも、両親が事故で亡くなってまだ社会に出ていなかった俺と幼い妹が二人きりになっても、なんだかんだ言い訳を並べて距離を取ろうとしてたし、光莉が例の病気を発症してからはそれこそ連絡さえ取ろうとしなかった。
まあその辺は向こうにも生活があるし妹の病気は簡単に伝染るものじゃないとされていても万が一を考えればまず自分の身を守ろうとするのは道理だろうさ。俺だってそこは承知してるし割り切ってるつもりだよ。あくまでそうやって自分を守ろうとしてるのを誤魔化そうとしてるのが透けて見えて不愉快だっただけだ。口先だけでいい人ぶろうとしてるのがムカついただけだ。
だがそれについても不愉快ではあってもそこまで恨んでもいない。ある程度は理解できるのも事実だ。俺も同じ立場になったら同じことをしてしまうだろうという予感もある。
惑星探査チーム内にもその手のすれ違いはあっただろうなとは思う。で、そう思うならあらかじめ対処できるように想定しておく必要はあるだろう。
エレクシアやセシリアやメイフェアやイレーネやアリアンや鈴夏だけでは対応しきれないだろうから、アリスシリーズやドライツェンシリーズやドーベルマンシリーズやホビットシリーズでもそれなり対処できるように準備していきたい。
そして<人間同士のいざこざ>についてはまず人間として扱ってもらえることが大前提になる。なにしろAIやロボットは<人間以外の生き物同士のトラブル>についてはそれこそ事務的に対処する。当然<当事者同士の意見>なんて聞かない。引き離すのが適切と判断すれば容赦なく引き離すし。
逆に人間の方がそういう時には色々考えてしまうだろうな。




