表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
2964/2982

キャサリン編 人間として生まれたのに

一般的なフィクションだと事実上の監禁状態にあるサディマが拘禁反応を示したりしてトラブルになりそれが<イベント>として描かれたりするかもしれないが、元々、


『閉鎖的な空間に長く留まる』


こと自体が<任務の一つ>みたいなものだった彼にとって、そこそこ上等なホテルの一室に匹敵する今の<防疫用隔離室>での暮らしはこれといって苦痛ではないそうだ。ましてや一週間程度なら<惑星探査任務中の休暇>と同じとのこと。


まあその辺は俺も<惑星(プラネット)ハンター>という仕事をしていた時には光莉(ひかり)号の中に何ヶ月もこもりっぱなしだったりしたわけで、それを思うと『そりゃそうか』って感じではある。


だから隔離期間中にそのことを理由に何かイベントが起こる予感はまるでない。しかもサディマ自身<朋群(ほうむ)製AI>の開発が楽しいらしくて。


ただ、


朋群(ほうむ)人とは?』


という点での理解がまだまだだから現時点ではサディマ当人を含む、


<地球人では有り得ない透明な体を持つ者>


をまず人間と判断できるようにしている段階だった。しかし、同じように透明な体を持ってはいても、(がく)夷嶽(いがく)牙斬(がざん)(みずち)は『人間じゃない』からその辺りの区別についてはシモーヌやシオやレックスと協議を重ねてるそうだ。まあ(がく)夷嶽(いがく)はそもそも恐竜そっくりの姿をしてるからあれだが、(みずち)は見た目だけならルコアとも似ているからなあ。厳密には(みずち)の体は大部分が鱗に覆われていて下半身も基本的に、


<脚が退化しほぼヘビと同じ姿になった鵺竜(こうりゅう)の一種>


に極めて近いのに対してルコアの下半身はどちらかと言えばイルカに近い肌の質感をしていて鵺竜(こうりゅう)とはまったく違うんだ。現時点では存在は確認できていないがおそらくそういう感じの動物が朋群(ほうむ)のどこかにいるんだろうとは推測されている。


しかしビアンカとヒト蜘蛛(アラクネ)は生物的にはほぼ同種と言っていいほどに近いが、人間としての知性や理性を持つビアンカに対して昆虫と大差ないヒト蜘蛛(アラクネ)は明らかに人間とは言えないだろう。が、そうなると今度は、


『人間としての社会性をほぼ持たないキャサリンはどうなんだ?』


という話になってくる。凶暴性の点では確かにヒト蜘蛛(アラクネ)とさほど違わない。しかしキャサリンは確かに人間なんだ。俺達の感覚では。


だからまずは、


『人間から生まれた者は人間だ』


と規定することにしようと思う。ただそうなると今度は俺の子供達も全員<人間>ということになり、その子孫も皆<人間>になるんだよな。


『人間として生まれたのに野生に還るとはどういうことか?』


という問題が生じるんだ。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ