キャサリン編 安心したよ
『まさかそんなことが……!』
身を乗り出して驚くサディマに、
「信じ難いがそれは事実だよ」
レックスがそう告げて、さらに、
「そうだ。僕はビアンカとの間に子供がいる。その上でケインもイザベラもキャサリンも僕の子供達なんだ」
久利生がビアンカに寄り添いながら口にした。
地球人社会では<養子>も当たり前のことになってるから<血の繋がらない子供>も別に 珍しくもない。かつては養親になるにも審査が大変だったらしいが、今では家にメイトギアがあればそれほど難しくない。その代わり犯罪履歴があるとほとんど認められることはないらしいが。
当然か。何もわざわざ犯罪履歴のある人間に養親になってもらわなくても施設で暮らせばよっぽど安全だし。なにしろ子供二人につき一体のメイトギアを配置するのが決まりだし、わざわざ新しく購入しなくても役所に申請すれば専用のメイトギアが派遣されるわけで。
昔は児童養護施設自体で『保護されている子供が虐待を受ける』なんてことがあったと聞くものの、今ではよっぽどおかしなところでない限りそんなことは有り得ない。メイトギアがそんなことを放置するはずもない。
そういう背景もあり、
「驚きが大きいが久利生やビアンカの様子を見るに幸せそうだから安心したよ」
サディマも納得してくれたようだった。二人がそんな荒唐無稽な冗談を口にするタイプでないこともよく知っているからだろう。これがよく知らない人間の言うことならすんなりとは信じられなかったに違いない。
「しかしこの惑星は本当に不可思議なことが起こるところなんだね」
彼が感慨深げに顎に手をやったのを見て、俺はさらに、
「いずれメイガスの娘のルコアにも機会があれば会ってもらうことになると思う。彼女はサーペンティアンという種族で、今はビアンカの娘でもある」
と告げた。これにも彼は、
「そうか。会えるのを楽しみにしているよ」
穏やかな笑みを浮かべて呟くように口にした。ビアンカが久利生と結ばれて家族ができて幸せに暮らせているのを察したからだろう。
ただ同時に、
「そういえばシモーヌは二人いるのにレックスは一人なのか。大変そうだな」
と今度は神妙そうな表情になって呟いた。こちらは本当に独り言がつい出てしまったようだ。
だがこれにはシモーヌが、
「私の今のパートナーはこの錬是だよ。今のレックスはシオのパートナー。私の方がかなり前に顕現したからね」
苦笑いを浮かべながら応えた。すると、
「あ、ああ、すまない。これはさすがにデリカシーに欠けていた」
慌てて彼が頭を下げたのだった。




