キャサリン編 ロマンチスト
そんなサディマに、面談用に設置したモニター越しではあるものの向き合う。
「改めて初めまして。私の名前は神河内錬是。このグループの代表を務めさせていただいている。色々気になることもあるだろうから、まずはあなたの疑問に答えていきたいと思う」
姿勢を正して丁寧にそう切り出した俺に、
「私は……申し訳ない、今はまだ名前などを思い出せない。しかしまずはお礼を言わせてほしい。ありがとう」
ピシッといい姿勢のままで頭を下げるサディマの姿からは知性と理性が強く伝わってきた。そんな彼に俺も、
「いえ、これは我々にとっても利益になることなので、そのための体制は整えているんです。あくまでも通常の対応ですから、お気になさらずに」
と返した。この種の<謙遜>は相手によっては通じない可能性もあるものの、シモーヌ達から聞いていたサディマの人となりを考えればこちらの方が適切だろうと判断したんだ。
すると彼も、
「いえ、助けていただいたのは事実ですから感謝せずにはいられません」
ニカッと気持ちのいい感じで笑って見せてくれた。屈託のない<気のいい青年>なんだなと感じる。さぞかし女性にモテただろうな。それがわざわざ惑星探査の仕事に就こうというのはいかなる理由があってのことかとは思うものの、このタイプの人間は割と<ロマンチスト>だったりするからなあ。そういう俗っぽいことよりロマンの方に惹かれたりするのが少なくない印象がある。
実際、シモーヌやビアンカやシオは、
「サディマはロマンチストだよね」
「うん、けっこう夢見がちな人だと思う」
「AIエンジニアになったのだって、『AIに心はあるのか?』ってのを確かめたかったからって聞いた覚えがある」
とのことだった。イケメンで柔和でロマンチストとか、やっぱり『モテない理由がない』だろ。
が、
「でも私はレックスの方がタイプだったけど」
「うんうん」
「私は少佐…遥偉しか見てませんでした」
シモーヌとシオとビアンカはそう惚気る。
「はいはい、それはよござんした」
俺としては苦笑いを浮かべるしかなかったよ。
そんなこととはつゆ知らずサディマは、
「では、お言葉に甘えて教えさせてください。私はどこの誰なのでしょうか? あなたの様子から私のことを知っているのではと感じましたが」
単刀直入に尋ねてくる。そういうところも理知的だな。怯えや不安は感じさせない。なので俺も、
「はい、こちらでもある程度は把握しています。あなたの名前はサディマ・バーティラル。惑星探査チーム<コーネリアス>のメンバーで、この惑星に不時着し命を落としました」
端的に告げたのだった。




