キャサリン編 サディマ・バーティラル
なんにせよ、サディマは車椅子ロボットに乗り換えてキャノピーが雨をしっかりと防いでくれていることにホッとしたようだった。
そこでようやく、
「ご無事で何よりです」
車椅子ロボットに備えた端末を通じて俺は彼と顔を合わせることができた。その上で、
「どの程度、状況を把握できていますか? ご自身のことは思い出せますか?」
問い掛けた俺にサディマは、
「私は……駄目だ。思い出せない」
苦々しく頭を振った。これで<オリジナルのサディマの記憶>はまだ戻っていないのが確認できたわけだ。その上でさらに彼は、
「だが、今のこの自分の体が普通じゃないというのは分かる。元からこうじゃなかったのは分かるんだ。自分に一体何が起こっているのか、あなたには分かるのか?」
と問い掛けてくる。だから俺は、
「はい。こちらでは概ね状況を把握しています。なのであなたを保護し落ち着いたところで判明していることについては説明したいと思います」
努めて冷静に要点だけを答えた。これに彼も安心したのか、
「そうか……なら任せる」
背もたれに体を預けて「ふう……」と大きく息を吐いた。そしてキャノピーの外に視線を向けながら、
「すごい雷と雨だな……なんかこんな感じの雨を昔見た気がする。いつだったかは思い出せないが……」
俺に対してというよりは独り言のように呟いた。その様子を見ても、具体的に詳細な記憶までは戻っていないものの<サディマ・バーティラルとしての人格>については概ね取り戻せている印象があった。
シモーヌは明らかにパニックを起こして人格が崩壊した状態だったし、ビアンカは<アラニーズとしての習性>に引っ張られていると言ってもいい状態だった。
対して久利生やレックスは二人に比べると明らかに冷静だったし記憶を取り戻すのも早かった。これは女性がどうしても感情の振れ幅が大きいのに対して久利生やレックスは理性が優位にあったというのも影響しているのかもしれない。
俺は別に女性を揶揄したいわけじゃない。あくまで『そういう傾向がある』というだけの話でしかないし、そういう傾向があるのならそれを考慮した対処を心掛けるべきだと考えているだけなんだよ。それにルイーゼはどちらかといえば久利生やレックスに近い印象だったし、個人差は大きいと思う。
サディマも理性が優位に立っているタイプなんだろう。正直なところ俺にとってもその方がありがたい。協力をお願いするのもやりやすそうだし。
だがそれはとにかく彼をちゃんと保護してからだ。




