キャサリン編 いよいよ来たか!
光莉号の周囲については、
<落雷のメカニズムを阻害するフィールド>
があるからその効果の範囲内では雷は落ちない。<雷が落ちる状態>じゃなくしてしまうから物理的に落ちようがないんだよ。コーネリアス号も光莉号のそれとは仕組みは異なるものの同様の効果を持つフィールドが張られているからこちらも雷は落ちない。コーネリアス号の電力が十分に確保されたから回復した機能だ。
しかしビクキアテグ村にはその効果は及ばない。なので<避雷針>を立てると同時に雷雲が近い時は外での作業は行わないことにしている。どうしてもしないといけない場合はロボットのみで行うんだ。
けれどキャサリンにはその辺りは伝わらない。本能的に危険を回避する直感は働くんだろうが、<衝動>までは制御しきれない。いったい何が彼女を突き動かしているのか。
そうやって雷雲に向かって真っ直ぐに駆けていく彼女の姿を、ドーベルマンMPMを乗せたハチ子のカメラが捉えた。上空から遠方を確認することも多いハチ子には、陸上での運用を想定しているドーベルマンMPMやホビットMk-Ⅱらよりは高性能な望遠カメラが搭載されている。人間と違ってロボットはそのカメラのデータを共有できるからそこまでのカメラを個別に搭載する必要もないんだ。
まあそれはさて置いて上空からいつでもキャサリンの援護ができるように配置につく一方で部隊の半分は彼女から少し離れたところで地上に降りてやはり援護のための配置につく。
が、その時、
「地上に人影が確認できます」
ハチ子のカメラのデータを解析していたエレクシアが淡々とした様子でそう告げた。
「なにっ!?」
思わず声を上げた俺に、
「データ照合。不定形生物由来の個体と推定。コーネリアス号の乗組員の一名に九十三パーセントの確率で特徴が一致。サディマ・バーティラルのコピーと思われます」
やはり淡々と告げてくる。
「サディマはAIエンジニアだよ。ようやくだね」
シモーヌが小さくガッツポーズを取ってくる。
「そうだな。でもそれは無事に救出できてからの話だ」
俺も内心では『いよいよ来たか!』と興奮してしまいつつ、何よりもまず人命優先を忘れないためにも冷静さを装っていた。
ああそうだ。俺達は決して<道具の入手>を待っていたわけじゃない。AIのエンジニアを求めてたのは事実だが、それはそれとして人間を蔑ろにするつもりはないんだ。
だから、
「サディマ・バーティラルの保護も同時に行う!」
すぐさま増援を出したのだった。




