キャサリン編 雷雲
「……」
今日もいつも通りに狩りに出たキャサリンだったが、そんな彼女の視線の先には時折強い光が明滅する真っ黒な雲。
雷雲だ。それもかなり勢力のある。
草原はあまり雨が降らないが降る時は非常に激しく降る場合もある。大変な雷を伴いつつ。今はまだかなり距離があるように見えるものの、それは間違いなく近付いてくるものだ。雲は基本的に上空の風によって決まった方向に流れるがゆえに。
地表近くの風は巻くように風向きを大きく変えるものの上空では概ね一定方向に吹いている。これは惑星の自転の影響を受けた空気の流れだからだそうだ。対して地表付近の風は気圧の差によって生じるからその都度向きが変わると。
キャサリンは知識としてはその辺のことを知らないかもしれないが、経験上、その手の真っ黒な雲は自分の方に向かってくると理解しているらしく、警戒するようになっていた。
高いものがほとんどない草原では、落雷が動物を直撃することも珍しくない。そういう意味では直立した際には<サイゾウ>に次ぐ頭頂高を持つキャサリンは小型の動物に比べて確実にリスクが高くなる。その辺りについても<知識>はなくても本能的に危険を察知しているのか、彼女は無理はしなかった。早々に狩りを諦めて村に帰ってきてくれるんだ。
なのにこの日はなぜか引き返そうとはしなかった。それどころか雲に向かって走り出したんだ。
そんな思いがけない行動に俺はすぐさまビアンカと灯と久利生に連絡を取った。傍にいたホビットMk-Ⅱを通じて。
「ビアンカ、久利生、キャサリンが雷雲に向かって行った。支援の部隊を向かわせる」
ホビットMk-Ⅱのスピーカーから発せられた俺の言葉に、
「! キャサリン!?」
ビアンカはギョッとなり、
「あちゃ〜」
灯は頭を抱え、
「了解した」
久利生は緊張しながらも冷静に応えてくれた。二次被害を避けるためにも三人を救援に向かわせるわけにはいかない。なによりビクキアテグ村も同じように雷雨に見舞われるはずだからそれにも備えてもらわないといけない一方で、状況については把握しておいてもらいたいし。それに今のドーベルマンMPMとホビットMk-Ⅱの部隊であれば生身の人間よりも頼りになる。万が一のことがあっても<損害>は出ても<被害>は出ないわけで。
ドーベルマンMPMとホビットMk-Ⅱの部隊はハチ子に搭乗して<空港>から発進し急行する。それこそほんの数分でキャサリンの姿を捉えるだろう。




