キャサリン編 四角四面な対応になる
人間(地球人)の場合はさすがに近親者同士での人工授精となれば地球の総合政府の管理下にある地域はもとよりほとんどの独立した植民惑星でも基本的には認められていない。
ただ、本人の強い希望があれば裁判所の許可の上で行うことは不可能じゃない。普通はそこまでする人間がいないというだけだ。不妊はちゃんと治療できるし、事故などで生殖機能を失ったとしても再生医療により回復できる。ゆえにわざわざ近親者から提供を受ける必要もないんだ。
だからこそというのもあって、安易に選択されないようにと『裁判所の許可が必要』になっているわけだ。
しかし当然ここには<裁判所>はない。となればもちろん<裁判所の許可>ももらえない。こうなるとAIは協力はしてくれない。無許可でのそれは<法に触れる行為>だからだ。
人間を守るためにAIは不法行為には協力してくれない。その一方でここ朋群の生物群は地球人社会の法に認知されて保護対象として組み込まれているわけじゃないから、虐殺のような行為でもない限りはAIは実力行使という形で止めることはないんだ。俺が別にここの生き物を虐げるつもりがないことは分かってくれているし。その上で<人間としての情>の範囲であまり極端でなければ協力もしてくれるんだよ。
今のAIはそういう形での融通は利くんだ。
あくまで『人間を守るため』となれば四角四面な対応になるというだけで。
まあそこは人間(地球人)の側があまりにも身勝手な欲望を肥大化させる傾向にあるから堅物的に要望を聞き入れる範囲を絞らなきゃいけないというのがあるんだろう。確かに俺自身は光莉号やエレクシアの対応に大きな不満はなかった。概ね俺の意向に沿った対処をしてくれてたと思う。
問題があるのはだいたいいつも人間の方なんだよ。厄介なことに。AIの方はいつだって<人間の幸せ>だけを考えてくれている。それは決して<人間的な情>に基づいてのものじゃないというだけだ。AIには<人間のような心>はないから。あくまでも『法に基づいて』なのを人間(地球人)の側が、
『四角四面だ!』
と揶揄するだけなんだよな。自分の<我儘>を聞いてくれないから。だけどそれは<子供の理屈>だと俺は思う。恥ずかしいことだと思う。その恥ずかしいことを子供の前でするような大人ではいたくない。
もっともキャサリンはそんなことまるで気にしないだろうなあ。
あくまでも俺の方が、俺達の方が、勝手にそう考えているだけだ。




