キャサリン編 周囲の人間が心掛けるべきこと
なにしろ『裸でいても欲情されない』のならそれこそ性犯罪に遭う危険性が格段に下がるわけだし。
まあ実際にはそこまで単純な話じゃないかもしれないが、多少でも下がるのならありがたいことではある。
それに現状、そういうトラブルはない。『野生に近い』からこそ、
『相手がそういう気分になってるか否か』
を感じ取れてしまうようだ。陽と和と麗はまさしくそれによって<結婚>を決めたわけで。
実年齢はまだ十代の陽達だから<そういう欲求>も強くなりがちだろう。そんな時期に、
『相手がそういう気分になってるか否かがちゃんと分かる』
というのは非常にありがたい。しかも<相手を尊重する感覚>も備えた上でだ。それがあればこそ当人達の判断に任せることもできた。そこでもし失敗しても<取り返しのつかない事態>にまでは至らないと思えたし。
人間として生きている以上は失敗もあると思う。『何一つ失敗するな』とか言われたってそんなことはそもそも無理だ。俺自身、散々『やらかして』きたわけで。そういう自分を棚に上げて『失敗するな』なんてのは道理が通らないよなあ。
道理が通らないから当然のこととして反発も受ける。
久利生のオリジナルはそれこそ『何一つ失敗してはいけない』というプレッシャーの中で生きてきて、
『そんなことは無理だ』
とつくづく実感したそうだ。なにしろ当の久利生自身が惑星探査の任務に就くことを選択して命を落としてるし、彼の親も親族も彼がそうなることを防げなかったんだから。
途轍もなく優秀な人間揃いの<久利生家>でそれなんだから凡人じゃそれこそ失敗するのが当たり前だよなと俺も思う。
もちろん失敗しないことを心掛けるのは大事ではあるものの、例えば<競技者>なんかの場合だと、
『負ける者がいるからこそ勝てる者もいる』
わけで、そもそも『誰も失敗しない』なんてことが成立しない世界ではある。その中で『自分だけが失敗しない』とか本気で思うのはそれこそ『認知が歪んでる』ってもんじゃないか?
俺にはそうとしか思えないんだ。まあ完全に無敗のまま現役を引退した選手なんかもいないわけじゃなかったらしいもののそれは極めて例外的な事例でしかないし。
キャサリンだって何度も狩りを失敗してたりする。だからこそ、
『失敗した時にそれをどうリカバリーするか』
が重要なんだと思う。『失敗しないように心掛ける』のも重要でありつつ。
まあそれは当人の心掛けという以上に、
<周囲の人間が心掛けるべきこと>
かもしれないが。




