キャサリン編 秘すればこそエロス
『自分の子供であっても自分の思い通りにはならない』
これは他ならぬビアンカ自身がそうだった。ビアンカの両親が望んだ生き方を彼女は選ばなかったわけで。
そんな自分自身を自覚すればこそ彼女は<自分の子供が自分の思い通りになってくれないという事実>についても受け止めることができた。
「自分は親の言う通りにしなかったのに子供には自分の言う通りにしてほしいとか、確かにおかしいですよね」
苦笑いを浮かべながらそんなことを言ったりもした。加えて久利生も、
「僕も何もかもすべて両親の言いなりになってたわけじゃないしね。一時期医師の仕事をしていたのもそうだし、惑星探査の任務についても両親は軍に働きかけて僕を候補から外そうとまでしたけど僕も<名誉>を盾にしてあの人達を言いくるめて参加したから」
そう言ってやはり苦笑いを浮かべた。まあその結果が<遭難><死亡>だったから親不孝と言えばその通りなんだとしてもそれも含めて『親は親。子供は子供』なんだと思う。
なんて<親の気持ち>はまるでお構いなしにキャサリンは水浴びした後、畔に立って体を日に晒し乾かす。
その姿は、
<巨大なクモのような虫の頭の上に座った全裸の若い女性>
そのもののようにも思えたが、不思議と<猥褻>とは感じなかった。それは俺自身が『見慣れてしまったから』というのも大きいとは思いつつ、あまりに堂々としている彼女の毅然とした佇まいに<美しさ>すら感じてしまったからのようにも思う。それ自体が自然なんだよ。
<人間>でありつつ<野生の獣の風格>も兼ね備えた美しさってところか。
それを<猥褻>と受け取る人間(地球人)もいるだろうというのは残念でもある。地球人はどうしてこれを猥褻だと考えるようになってしまったんだろうな。人間以外の生き物はそもそも<服>なんて着てないわけで、常に全裸なわけだ。毛皮に覆われている獣にしたってやっぱり地球人が着ている服とは根本的に異なっている。事実上の裸だ。しかし地球人以外の生き物はそれを猥褻だとは感じない。
まあ地球人は<発情期>というものを失った代わりに『いつでも発情できる』ようになったことで、所構わず盛ってしまうのを抑制する必要がでてきたってことかもしれないが。
しかし『裸を隠せば発情しなくなる』とは限らないのも事実だよな。何しろ、
『秘すればこそエロス』
なんて考えもあるくらいだから。
『隠したことでかえって隠された部分に欲情する』
結果を招いてる気がする。




