キャサリン編 利用できるものは何でも利用する
キャサリンはいまだに<服>を着ようとしてくれない。それはイザベラも同じだが、イザベラは強硬に着ようとしないというよりは、
『なんとなく嫌なだけ』
という印象で、短時間であれば着てくれるようにもなってきてるんだよな。だからそう遠くないうちに着るようにはなってくれそうな予感もある。ケインにいたっては割と早い段階で着てくれたし。
しかしキャサリンはそれこそ服を着せようと近付くことすら許してはくれなかった。ドウでさえ服を着せようとして持っていると歯を剥いて威嚇してくる始末。一時、服を着せようとビアンカがあれこれしたことをよっぽど根に持ってるのかもしれない。彼女にとっては<嫌なこと>そのものなんだろう。だから今ではすっかり諦めた。それに彼女自身が服を着てないことで困っている様子もないし。
まあ、獲物を捕らえて食う時に血塗れになるから裸でいる方が水浴びするだけで綺麗になるし都合がいいというのは確かにある。
それに裸でいる彼女を『猥褻だ』と感じる必要もそもそもないしな。誰ももう何とも思ってないんだ。俺自身、ヒト蜘蛛を散々見てきて慣れてしまった。その状態が当たり前になってしまうとこんなもんだろう。その一方でシモーヌに対しては今も気持ちが昂ることはある。シモーヌは俺にとって<特別な存在>だからだろう。
『自分にとって特別な存在にだけそういう気分になれる』
のならむしろその方が<健全>ってもんじゃないか?
俺はそう思うし、そこはシモーヌもビアンカも久利生もシオもレックスも同じだ。シモーヌやシオやレックスはまさしく<生物の専門家>だから元々そう思ってたらしい。久利生の場合は、
『久利生家を残すために必要とあらばパートナー以外とでも子供を作るという考えの下で育てられた』
のもあってその辺の認識が若干歪な部分もあるそうだし、ビアンカは基本的に<普通>に育ったことで<異性に対する認識>も良くも悪くも普通だったのもあって、<他所の子供>については口出しは避けつつも<自分の子供>については何とか服を着てほしいと思案したとのことだが、今じゃ俺と同じで慣れてしまったそうだ。
黎明も小さい頃は服を着ようとしなかったが今では<天然繊維製の服>なら着てくれるようになったし、イザベラもいずれ着てくれる気配も出てきたから、
『時間が経てば着てくれるようになると割り切れた』
というのもあるんだろう。
キャサリンというやや難しい事例もありつつだがそれでいいと俺は思うんだ。自分の子供であっても自分の思い通りにはならないんだし。




