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キャサリン編 パートナーの力を利用する

そうしてビアンカも久利生(くりう)もキャサリンの在り方をただ認めることを心掛けてきた。ビアンカはそれこそ母親として感情を抑えるのが難しい部分もあっただろうが、そこは久利生(くりう)(あかり)がフォローしてくれることで何とかなったようだ。納得まではできなくても。


で、そんな母親の気持ちを知ってか知らずかキャサリンはいつものように狩りを始める。しかし、体が小さかった頃ならまだしも見た目にはすっかり成体(おとな)な今の彼女では高さ一メートル程度の茂みには十分に隠れることができない。アラニーズとしての本体の腹を完全に地面につけても背中側が僅かに覗いてしまう。


だから彼女は、その状態で動かない。動かずにじっとして完全に風景に溶け込むのを待つ。<ただの大きな岩>のように。そうして獲物を油断させ<射程距離>に近付いてくるのを待つんだ。


だがその方法は常に上手くいくとは限らない。獲物である草食獣の方だって生きるために全力を尽くしてるわけで。この方法で狩りが成功するのはざっと三割程度か。


野生であればそれが普通だろう。常に獲物にありつけるとは限らないのは決しておかしいことじゃない。だがキャサリンはその点でも確かに<人間>だった。毎日必ず狩りを成功させるために頭を使った。誰が教えたわけでもなく、獲物が自分への警戒を緩めることがないと察した時にはわざと立ち上がって姿を現すんだ。


すると当然、草食獣達は逃げる。が、逃げ出した草食獣の一頭が、


「ギピッッ!!」


悲鳴を上げて倒れ込んだ。その胴体に何かが絡みついたんだ。


ドウだった。草食獣の一頭が逃げようとした先にドウが潜んでいて胴部に四本の脚を絡みつかせて締め上げたんだ。と同時にマニピュレータで首を絞め上げ、脳への血流を阻害する。


と、ドウに組み付かれた草食獣(インパラ竜(インパラ))は糸が切れたマリオネットのように地面へと崩れ落ちた。脳に十分な血流がいかなくなって意識が絶たれたんだろう。


銃やナイフを使えばもっと簡単に仕留めることができるが、キャサリンのやり方に合わせてドウも<武器>は使わない。あくまで自身の機体のみで狩りを行う。つまりキャサリンはドウとの連携による狩りを行うようになっていたんだ。


誰に教わることもなく。


その辺りのセンスはさすがだと思う。たまたま逃げた獲物の先にドウがいて捕らえてくれたのが切っ掛けだったにせよ、それをちゃんと利用しようとするのが大したもんだよ。人間として見れば知能は幼児並みかもしれないが、ちゃんと自分の力で生きていく、ちゃんとパートナーの力を利用する、それができる子なんだ。



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