表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
2910/2979

キャサリン編 自らが知っていかなければならない

しばらくそうやって草原をただ見つめているだけに思えたキャサリンが、何かを感じ取ったのか不意に走り出した。人間にはなかなか反応が難しいであろう突然の動きだ。けれど彼女の動き出しの気配そのものを感知できるドウは一瞬も遅れることなく彼女と共に走り出す。人間にはまったく同時としか思えないようなタイミングで。


キャサリンにとってはむしろそれが当たり前なので特に気にしている様子もない。時速二十キロ以上の速度で二キロ近い距離を駆け抜け、高さ一メートルほどの草が生い茂った場所にやってきた。


そこは小さな池もあり多くの草食獣が餌場にしている場所でもある。となると当然、肉食獣にとっても餌場であり、事実ビクキアテグ村の<お隣さん>なレオンの群れの縄張りでもあった。


しかし今日はそのレオン達の姿はない。別の狩場に出向いているんだろう。キャサリンはどうやらその辺もしっかりと考えているらしい。なるべくレオンやオオカミ竜(オオカミ)とは遭遇しないようにしてるんだ。


以前はいささか無鉄砲なところもあってレオンやオオカミ竜(オオカミ)と遭遇したら力尽くで我を通すような真似をしていた。その時点で彼女は単体でならレオンもオオカミ竜(オオカミ)も圧倒していたが、多勢に無勢な面があったのも否めず、それをドウが補ってくれたことで何とか凌ぐことができていたんだ。


正直、ビアンカも久利生(くりう)も気が気じゃなかったと思う。実際、ビアンカは何度かキャサリンを諌めようともしたんだ。しかしキャサリンにそんな<親心>届かず、歯を剥き出して威嚇してきたり、さっさと家に閉じこもってしまったり。


そんな<娘>にビアンカは涙を浮かべたりもしたものの、


「アラニーズは地球人とは違うからね。僕達は彼女のことを知らなきゃいけない。僕達のことを押し付けようとするのもまずは彼女のことを知ってからだと思う」


久利生(くりう)がビアンカを抱きしめながらそう言ったと。彼自身も内心では心配で動揺していたらしいが、パートナーの姿を見て『自分がしっかりしなければ』と思えたんだろうな。


加えて、オリジナルの久利生(くりう)は自分じゃない誰かが自分の与り知らないところで決めた<家を守り継ぐ役目>に沿うだけの人生だったのが本当に『自らの頭で考えて判断して決断する』必要が出てきたのと『一方的に誰かから教えられる』のではなく自らが知っていかなければならないという部分で腹を括ったからというのもあるかもしれない。


だからこそ地球人の感覚ではおよそ理解できないキャサリンの在り方を理解したいという気持ちも生まれてきたんだろうという気はする。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ