『すっごい』は『すっごい』で!(灯らしいな)
いろいろとリスクがあるにしても、それらも実際にそうなってみてから改めて考えてみればいいという結論で納得する。
どうせそうするしかないっていうのも分かってはいるんだ。
でまあそれはいいとして、光達チームBの様子を確認する。
「どうだ? 灯」
今はまだ移動中なのは分かってるが、余裕のあるうちに連絡の練習ということで。
「あ、パパ? すっごいよ。すっごいの!」
って、何がどうすごいのかを説明してもらいたいんだが、灯は興奮するとだいたいこの感じになってしまうので、まあ、初めての遠出でテンションも上がりまくってるだろうし、今日のところは仕方ないか。
でも、隣で光が、
「何がどうすごいのか具体的に説明しなさい。でないと分からない」
だって。う~ん、さすが先輩だな。
だけど灯は、
「え~? でも『すっごい』のは『すっごい』だよ。なんて言ったらいいの?」
とのことで。
あはは、こりゃダメだ。
<仕事>として見れば全く話にならないが、だが正直、今の灯にまだそこまでは求めてない。ただ慣れてくれればいいだけだ。
すると光が手本を見せてくれる。
「現在、W67地区を、W117地区に向けて西進中。人員、装備共に問題なし」
実に事務的で愛想もないが、<仕事>として見るならこれで正解だし、かつ光らしい報告だと思う。
「なんかつまんない! 『すっごい』は『すっごい』でいいんじゃないかな」
などと、灯は不満そうだ。だからは俺は、
「そうか。じゃあ、どう『すっごい』のか説明できるようにならないとな。でも、光の言い方も、仕事として考えたら普通なんだぞ」
と、灯にとってなるべく分かりやすいように配慮しながら諭す。
昔、俺が仕事の説明を先輩からされた時に、既に仕事が分かってる人間にしか分からない説明をされて、
『あ、この人は駄目だ』
って感じで見限ってしまったことを思い出しつつ、そうならないよう気を付けたつもりなんだ。
仕事を早く覚えてもらいたいなら、分かるように説明しないと駄目だというのを俺も学んできた。自分が上手く説明できてないのを相手の理解力がないせいだとすり替えてしまう上司や先輩は、結局、顧客相手でも同じ考え方をしてた。で、思い通りにならないと愚痴をこぼしたり自分より立場が下の人間に八つ当たりして憂さ晴らししてたな。
その点、光は、言い方はきつそうにも思えるが、実は淡々としてるだけで高圧的ではないからまだいいと思う。
光自身、今回初めて<部下>を持ったようなものだからな。彼女にとっても経験を積むチャンスだ。




