キャサリン編 人間か獣か
まあまた話が逸れたが、距離感さえわきまえていればキャサリンとの共存は十分に可能ということだ。基本的には猛獣とのそれだと思っておけばだいたい間違いないと思う。彼女の方から攻撃を仕掛けてくるということがないから対処としてはそれで十分なんだよ。
人間(地球人)の場合それを、
『こちらばかり気を遣うのは不公平だ』
として不満を抱く者もいるものの、いやいやキャサリンはここ朋群に元々あった<摂理>に従って生まれたんだ。その摂理自体がもしかすると自然に発生したものじゃなく外的な干渉によるものだったりするかもしれないものの、もう完全に<惑星朋群の自然>として定着している以上は、後から入ってきた俺達が蔑ろにするのは違うと思う。もしかすると変わっていく可能性もないことはないにせよ力尽くで強引に変えようとするのは拙いと思うんだ。それを考えれば優先されるべきは彼女の方であって余所者でしかない俺達は彼女こそを尊重しないといけないだろう。
だが同時に、<朋群における人間というものの定義>を考える上では非常に悩ましいのも事実だ。何しろキャサリンは<人間>であるのに対して素戔嗚は<獣>と定義してるくらいだし。
正直、地球人の感覚からしたら、
『キャサリンも獣にしか見えない』
という者も多いだろう。もしくは、
『キャサリンを人間扱いするなら素戔嗚も人間として扱わなければ不公平だ!』
とか主張する者もいるかもしれない。だがその辺りは単純に、
『人間であるビアンカから生まれた以上、キャサリンは人間だ』
でいいと思ってる。それに片言とはいっても言葉もしゃべるし。滅多にしゃべってくれないだけで。でも一応、ビアンカと久利生と未来と黎明と蒼穹については名前も口にしたことはあるんだ。そして<ドウ>のことも。
こうなるとやっぱり<人間>ってことにした方が収まりがいい気がする。しかも<ビアンカの子>なんだから。
素戔嗚は普通に野生のレオンとして生まれてるし言葉もしゃべらない。名前についてはある程度は区別もついている様子ではありつつ『言葉として理解している』というよりは『音の違いを認識してる』感じだし。
とにかくキャサリンと素戔嗚については今の区別でいいと思うんだ。しかし今後さらに判断が難しくなる事例が出てこないとも限らないから、今のうちにもっとその辺りを煮詰めておく必要を感じてる。
ただし、<地球人社会製AI>の認識ではキャサリンも素戔嗚も『人間じゃない』なんだよなあ。




