キャサリン編 彼女の攻撃を誘発する
以前にも触れたが、キャサリンはドウ以外のロボットについては決して接近を許さない。他のロボットが近付こうとすると歯を剥き出して威嚇する。<敵>とまでは認識していないであろうことは、それ以上近付かなければ威嚇だけに留めてくれる点からも分かる。だから距離感さえわきまえていれば十分に共存は可能なんだよ。彼女から襲い掛かってくることもないし、そもそも近付いてもこない。
彼女の方がそうしてくれているのにわざわざ自分から近付いて行って『彼女の攻撃を誘発する』とか<愚の骨頂>というものだと俺は思う。
地球人社会においても野生生物のテリトリーに人間の方から足を踏み入れることは厳しく禁止されている。それを破ればすぐさま身柄は拘束され強制的に居住区に連れ戻された上でAIを用いた簡易裁判が即日行われ、九十九パーセント以上の割合で罰金刑ないし禁固刑が言い渡される。
<AIを用いた簡易裁判>が不服ということであれば申し立てにより人間の裁判官が行う通常の裁判も受けられるが、有罪判決を受ける確率はほぼ変わらない上に『反省の色なし』ということで裁判官の心証も悪くなり、判決内容は厳しいものになる傾向があるそうだ。
そもそもメイトギアを連れていれば立ち入り禁止区域に足を踏み入れようとしても止められるし、それを嫌ってメイトギアを連れて行かないのであればそれは<うっかり>や<過失>などではなく『強固な犯意に基づいた不法行為である』と見做されるから<無罪>になることがほとんどないんだよ。
今の地球人社会ではたとえ犯罪者であってもAIやロボットが人間を見捨てることはないものの、それはそれとして<不法行為>に対しては厳格な態度で臨むわけだ。と言うか、むしろ確実なセーフティネットがあるからこそ身勝手な不法行為については厳しく対応されるんだ。『別に命の危機があるほど追い詰められているわけでもないのに』ということで。
何より、何度も言うように身近なAIやロボットが不法行為に手を染めないように<忠告>や<警告>や<身を挺した妨害>までしてくれるというのにそれらをかいくぐってまで実行するのならそれは紛れもなく<強固な犯意に基づいた不法行為>というものだろう? <不同意性交>や<加虐嗜好>さえ<代償行為>が用意されてるんだからそこで抑えておけばいいものをその上で実行に移すとか、『情状酌量の余地なんてない』とは思わないか?
不同意性交でさえ終身刑が言い渡されることもあるのも当然だと俺は思う。




