未来編 ローカルルール
『外のコミュニティではただの犯罪者になってしまうという事実を理解できない場合がある』
これも人間(地球人)の悪癖の一つだったな。
『自分が属している小さなコミュニティのローカルルールが実は法律や一般的なルールに反していてもそれを問題だと認識できない』
という。
『小さなコミュニティのローカルルールに従っている時点で自分は正しいことをしている』
という<認知の歪み>が発生してしまうんだ。かつてはそれこそ学校内や職場内で当たり前のように発生していたと聞く。俺が地球人社会で暮らしていた当時にはメイトギアがその辺りについてもフォローしてくれるからあまり酷い事例はなかったらしいが、それでも<AI・ロボット排斥主義者のコミュニティ>ではそういうこともあったらしい。人間(地球人)という生き物がいかに自身を客観視するのが苦手かを如実に物語っているのかもしれないとは感じる。
<AI・ロボット排斥主義者のコミュニティ>であっても完全な自治権を獲得していないのであれば<地球総合政府の法律>に従う義務がある。自分達のコミュニティ内では『それが当たり前』とされていることが実際には法に触れる場合だってあるんだ。
<地球総合政府>は、基本的に強硬な手段を用いない。地球総合政府に属しているコミュニティに問題があったとしても力ずくで対処することはしない。そんなことをしなくても不法な行いをしていては他のコミュニティの協力を得られなくなるからあまり度を過ぎた振る舞いはできないからな。
かつては<自分達に協力的な国>とさえ取引できていればかろうじて成立していたりもしたらしいものの今は<必須の資源>自体が非常に多岐にわたるから特定のコミュニティだけを相手にしていれば済むわけじゃないし。
もちろん交易を行えてるコミュニティ経由で入手する方法もないわけじゃないが、それだとどうしても割高になるわけで。
『それでも構わない』と割り切れば成立するにせよ、そんなのはただ『意固地になってるだけ』だしなあ。実際、そんなことをしていると経済的にそれだけ厳しくなる。そもそも『AIやロボットを用いてコストを下げる』ことができないからどうしても効率が悪くて高コスト体質になり、一般的な他のコミュニティに比べて全体的な水準が下がる傾向にあるそうだ。
完全に自治権を獲得したコミュニティでもそれは大きくは変わらない。まあそこまでいくとほぼ鎖国同然の政策をとってるところがほとんどだから、
『自分達はこれでいい』
と考えてるらしいが。




