未来編 素戔嗚
『ファン向けのスタイルや仕草がすべての状況で通用すると勘違いしてしまう』
これも実際に決して少なくない頻度で発生していて、かつてはそれがゆえに触法行為にまで至ってしまったりしていたとのこと。今ではさすがに触法行為に至る前にメイトギアに止められることでそこまでは至らないものの、恫喝や暴力を正当化しようとする人間は確かにいる。まるで自分がすべてを好き勝手にできると思い込んでいるかのように傍若無人に振る舞おうとするそうだ。
だが未来は違う。それどころか素戔嗚でさえそんなんじゃない。
素戔嗚は確かに<人間>とするにはいささか無理があるから今でもあくまで<獣>として接しているが、粗暴で攻撃性も未来達の比じゃないが、しかし彼には彼の<獣としての道理>があって、それに従って行動しているだけだ。<獣であるがゆえの理不尽さ>はあるものの、
『彼なりに身の程をわきまえている』
のも確かなんだよ。<悪辣な人間>のように、
『他者を虐げることに悦びを感じる』
みたいな習性もない。
元々の彼は自身の過剰な強さを持て余していたがゆえに問題行動を起こしていただけで、<強さの序列>がはっきりした上で自身の強さの追及ができるようになったから安定したんだよな。生身の彼がどんなに鍛えてもグレイやハートマンに勝てる道理はないが、ホビットMk-Ⅱ相手なら、
『ルールの上でなら判定勝ちできる』
ほどの強さを持つし、ドーベルマンMPM相手でもいい勝負ができるくらいに強くなってる。まあこれも『時間制限を設けたルールの上では』の話だが。
ホビットMk-Ⅱがいくら<生身の地球人の達人レベル>の力しか持ってなくても、体格的に地球人と同等な素戔嗚だと<体重を活かした破壊力>は持ってないから今のホビットMk-Ⅱを自力で破壊することはできないんだよな。加えてロボットだから電力さえ確保できれば<スタミナ切れ>も起こさないからどう足掻いても素戔嗚では最終的にそこで負けてしまうんだ。
素戔嗚自身も『こいつらはそういうものだ』となんとなく理解はできてるらしい。だから限られた時間内で圧倒できれば納得してくれて、序列を受け入れてくれてるようだ。ゆえに攻撃性も抑えられてる。特に、他の人間相手に凶暴さを発揮する必要もなくなってるのがありがたい。
ちゃんと<力の差>が彼の中で腑に落ちてるからこそ安定できてるんだろう。彼が満足するまで<勝負>ができるのもロボットを運用できてるおかげだな。




